ベトナム国内での新型コロナワクチン製造ㇸ 研究開発や技術移転を加速

これまでベトナムは外交によって新型コロナウイルスのワクチンを海外から調達し、市民らへのワクチン接種も順調に行われている。これに加えて政府は、長期的な対策として、国内でのワクチン製造や周辺技術開発に力を入れ、独自の調査研究と技術移植を促進している。初期段階ではこれらの試みが成功を納めており、独自の検査キットの開発や純国産ワクチン「ナノコバックス(Nanocovax)」の治験実施などが実現している。

◇2021年じゅうに1億7000万回分のワクチン確保へ
新型コロナの感染拡大は、ベトナムをはじめ世界中で多くの死と莫大な経済的損失をもたらした。グエン・タイン・ロン保健相は、「ベトナム共産党と政府の指示のもと、感染拡大を抑えるためのあらゆる防御策や感染制御の手法が実施されてきた。さらに、現実に即した責任あるシナリオを準備し、適切な検査の実施に加え、人と人の間の距離の確保や隔離策の導入などを行ってきた」と説明する。

特に感染が深刻だったホーチミン市や南部地域の支援のために、保健省は中央省庁や地方当局などから7000人近くの支援員を派遣。ロン保健相は、「全体として、各地域で感染は制御され、事態改善の明るい兆しが見え始めている」と話す。

2020年の1月以来、政府はワクチンの輸入と海外からのワクチン製造技術の移植、さらに国産ワクチンの製造を目指しての調査研究戦略を繰り広げ、ワクチンの大量接種も順調に展開された。最初のワクチン輸入計画は、昨年9月、ワクチンを途上国に供給する枠組み「COVAX(コバックス)」のもとで3890万回分が調達されたのに続き、アストラゼネカ社と3000万回分の輸入で合意した。さらにファイザーやロシア製ワクチン、その他の国で作られたワクチンの輸入契約も行われた。政府は、年末までに人口の約70%のワクチン接種を終えることを目標としている。

これまでのワクチン調達の合意や契約に基づき、ベトナムは中国や米国、日本、オーストラリア、英国、その他の国々から1億3000万回分のワクチンが供与された。さらに、追加で4000万回分の供給を求め、年内にワクチン総数を計1億7000万回分にまでもっていきたい」とロン保健相は語る。

今年7月だけでも、1200回分のワクチンが、感染が急速に拡大した地域や、経済活動の原動力となる省や直轄都市に届けられたほか、政府が指定した優先接種対象者向けに接種が行われた。開始されたワクチン接種キャンペーンは、今年年末まで展開される。

◇ワクチン製造に向け調査研究を開始
ベトナムは新型コロナのワクチンの国内製造、さらには国産のワクチン製造にも力を注いでおり、ロン保健相によると、ベトナムは東南アジアで最初に新型コロナワクチンの治験第3相試験にまでこぎつけた国となった。これが、純国産ワクチンでホーチミン市の製薬会社、ナノゲン社(Nanogen)が開発した「ナノコバックス(Nanocovax)」だ。ベトナム軍医科大学が関係省庁と当局と綿密な連携を取り、ワクチン治験の第3相試験の実施を急いでいる。8月中にも調査研究チームへの2回目のワクチン接種が完了し、規定通りの登録プロセスへと移行できる予定だという。

新型コロナウイルスのワクチン製造の技術移転に関しては、これまでにロシア、米国と日本との間で3種類の合意書に調印している。すでに、ロシア製のワクチン「スプートニクV」は、ベトナム国内で第一陣の試験製造が終わり、本格的な大量生産に移行する前にロシアへ運ばれ、評価を受ける予定だ。年末までには技術移転が完了する見込みという。

一方、もっとも高度な技術を要する米国との間の技術移転は、8月中に試験が行われる見通し。2億回分のワクチンの製造能力をもつ施設が建設されている最中で、来年上半期には本格的なワクチン製造が開始される。

また、同大学は逆転写PCRという手法を使い、新型コロナの変異株を短時間で検出できる新たな検査用キットの開発にも成功。すでに国内各地の100以上の医療機関で活用されているほか、海外18カ国への輸出も始まっている。さらに、大量の検査を短時間に行うことのできる新型コロナ検出キット「アムファビオ(Amphabio)」も開発され、研究調査が継続される一方で、感染が急速に拡大したバクザン省などで実用されて効果が高く評価されている。

ホーチミン市開発研究所のチャン・ホアン・ガン所長は、「強力な伝播力を持つデルタ変異株に対処するためには、ワクチン開発をより迅速に進める必要がある」と訴える。保健省によると、ベトナムはナノコバックの開発ではこれまで、期待のもてる試験結果が得られているといい、ベトナムのバイオテクノロジー分野における目覚しい発展を示した実例といえる。

ブオン・ディン・フエ国会議長も、「ワクチンは、新型コロナを廃絶するための、戦略的に有効な武器だ」としており、第13回国会で新型コロナの感染制御と、コロナワクチンの大量接種が主要任務とされた。