ベトナムは、市民や企業により良いサービスを提供するためだけではなく、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大後の回復を加速させるためにも、社会をデジタル化させる取り組みを強化している。なかでも電子政府構築は世界的にも評価され、大きな進展を見せている。

◇電子政府の構築
国連のレポートによると、ベトナムは2020年度の世界電子政府ランキング(EGDI)で前年度より2位順位を上げた。電子政府ランキングは、電子政府ランキングはオンラインサービス指標、人的資本指標、通信インフラ指標の3つの電子政府発展度指標を順位付けしたもので、ベトナムは東南アジア諸国で第6位、世界193の国と地域のなかでは86位になった。

中でも大きく貢献したのが、2019年12月に開始された国家公共サービスポータルサイトだ。この実現によって、21の省庁と63の省と市の2900種類の行政手続きが電子化された。サイトで取り扱われた書類は5700万件にのぼり、1年間の国家予算が8兆ドン削減できた。

ベトナム政府官房のゴ・ハイ・ファン行政手続管理局長は、ベトナムの電子情報システムが中央レベルから地方にまで同時に実施されたことが効果的だったとみている。国家公共サービスポータルサイトと、地方の各省や市など自治体の電子窓口を一本化したことによって、全国規模のID認証データベースに接続でき、個人情報の統合や共有、管理手続が可能になった。

ベトナムの63の省と直轄都市のうち、38の省・市が「スマート郊外プロジェクト」に参加し、活発にデジタル変革を遂げている。全国的に4Gでカバーされるようになるなど、電子通信技術やインフラも向上し、ベトナムのモバイル端末利用率は世界平均と比べても高くなった。

電子商取引は昨年、前年度比16%増加して140億ドルに達した。なかでもインターネットショッピングは同46%増、タクシー配車サービスと食事の宅配は同34%増と、大きく成長。オンラインマーケティングと、娯楽・ゲームの分野も18%前年を上回った。2020~2025年の5年間の電子商取引は、平均で29%ずつ成長すると予測され、電子商取引による収益も2025年には総額520億ドルを突破すると期待される。

次に専門家らが改善を促しているのが、電子政府の効率化だ。特に、 デジタル技術を活用して生活の質の向上をはかるスマートシティと電子商取引の2分野の発展は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が終息後、社会や経済を安定させるとの期待が大きい。

情報通信省のグエン・ヒュイ・ズン副大臣は、「今年6月に、ファム・ミン・チン首相が発令した、ベトナム初となる『電子政府発展戦略』が、国連の『持続可能な開発目標(SDGs)』とともに、今後10年間のベトナムの指針になるだろう」と話す。

アジア開発銀行ベトナム支社のアンドリュー・ジェフリー氏は、デジタル技術が政府にとって非常に強力な道具になると評価し、「デジタル技術の戦略的な活用によって、迅速で効果的な公共サービスをより簡単に実現でき、政府の信頼性を高め、市民に対して開かれた政府を実現できる」と、その充実に取り組む重要性を訴えた。

ベトナム情報通信省では、企業や個人に提供されるオンライン公共サービスの効率化に努めている。さらに、同省では、各省庁や地方自治体のすべてのオンラインサービスを、決済に至るまですべて電子上で完了できるデジタル化最高分類「レベル4」に引き上げることを、今年の目標に設定した。だが、このレベルで提供できるサービスは、現時点では全体の約45%に過ぎず、実現までの道のりは険しいとみられる。