拡大生産者責任、制度運用のための仕組み作りが急務

改正環境保護法に規定された「拡大生産者責任(EPR)」は、効果的な廃棄物管理を進める手段として期待されている。これによってベトナムでは、循環型経済や環境産業の発展が進むとともに、雇用も生み出すなど、経済・環境の両面で大きな利益が得られると考えられる。

◇他国の実践例
韓国では、2003年~16年にEPRを導入したことで、リサイクル率が最大72%に達した。また、リサイクルを実施する企業も増え、約1万人の雇用が創出された。

写真㊤=EPRの導入によって、廃棄物の回収・分別・リサイクルが促進されるだろう

南アフリカのEPRは2004年にスタートし、それによってプラスチックボトルを回収・リサイクルするネットワークが形成された。34の企業からなるリサイクリング・カンパニー(PETCO)が立ち上がり、リサイクルされたプラスチックの市場を開拓したほか、これらを回収する労働者の意識も向上させた。2005年には9840トン(全体の16%)だったプラスチックのリサイクル量を、18年には9万8649トン(同63%)にまで増やしている。

また、台湾では、多くのチャリティ団体が廃棄物を回収し、それらをリサイクル業者に販売することで活動資金を調達している。

このように、EPRの導入が、企業の輸入原材料への依存度を低減し、リサイクルされた2次原材料の競争力を高めるのに役立つことは明らかだ。EPRはまた、廃棄物の分別・リサイクル率やリサイクル材の品質を向上させるほか、労働・生活条件を改善することによって、包装ごみの回収・リサイクルに準正規・非正規の労働者を呼び込むことができる。

◇ベトナムの課題は?
ベトナムのコンサルティング会社、E-Policy社の法律・政策コンサルタントであるグエン・ホアン・フオン氏は、「EPRを効果的に運用するのであれば、スクラップ置き場や工芸村のリサイクル団体といった非公式領域に、国の機関が対応する必要がある」とし、「EPRに成功した国では、このような非公式領域はほとんど存在しない。これがベトナムとの違いであり、課題でもある」と続ける。

さらには、このEPR政策は包装ごみだけを対象にしており、国内の固形廃棄物全体についても、地方当局の指導の下、効果的に回収する必要がある。

ハノイ都市環境会社(URENCO)のファム・ヴァン・ズック副社長は、「ベトナムは、廃棄物回収のインフラ、とりわけ分別されていない固形廃棄物の回収に課題を抱えているが、一方で、住民や汚染を発生させる人々は、この問題にほとんど関心を持っていない」と指摘する。

最も重要なことは、EPR制度を運用する仕組みを作るために、明確な法的枠組みと民間の関係先との継続的な意見交換が必要だということだ。そうでなければ、目標は達成できないかもしれない。

ベトナムは、プラスチックごみを海へ排出する世界でも有数の国として、この問題を傍観してはならず、2019年の「海洋ごみに関するASEAN行動枠組み」の一環として、EPRを実施しなければならない。