農業副産物の有効活用を加速 適切な政策が必要

ベトナムでは毎年、1億5700万トンもの農業副産物が生じ、そのほとんどが燃やされるか、そのまま廃棄されて、ゴミ問題や環境汚染などを引き起こしている。だが、これらの副産物もリサイクル活用が可能なはずで、ベトナムでもこれらの再利用を増やし、効率化していくための適切な政策が必要だ。

◇ゴミと化す副産物の現状
ビンフック省の養豚場、タイ・フン・ティン社のグエン・ティー・ティエン社長は、豚の排泄物処理などに微生物を活用して500頭の豚を飼育している。過去5年間で養豚場は、一度も豚の疫病が流行したことはなく、環境汚染も引き起こしたことはないとティエン社長は胸を張る。ティエン社長はまた、南国果実、ドリアンの皮を活性炭や木酢液に加工して農業生産に利用したり、ココナッツ栽培をエビの養殖業と並行して行ったりするなどの工夫を実現させており、「ココナッツを原材料にした産物の自社活用や外部への販売が可能になり、収益が向上できる」と話す。

だが、ティン養豚場のように、副産物の有効活用を積極的に進める事例はそれほど多くない。1億5700万トンの副産物のほとんどが、燃やされたり、そのまま周辺に放棄されたりしていることは大きな損失だ。

農業農村開発省の畜産局が試算した収穫後に出る農業副産物はすさまじい量になるという。米ワラが1年間で4280万トン、トウモロコシ茎が360万トン、野菜くずや果物などの廃棄物が310万トン、デンプンの原材料となるキャッサバ芋の茎やカシューナッツの廃棄物がそれぞれ310万トン、その他の副産物が610万トンにのぼる。さらにその後、農産物を食品加工する際にさらに廃棄物が出る。コメのもみ殻が860万トン、トウキビをしぼった後の残渣のバガスが350万トン、トウモロコシの芯が140万トン、キャッサバ芋の皮が130トン、その他が200万トンだ。

野菜や果物の栽培で生じる副産物計8890万トンのうち、売買され活用に至っているのは52.2%に過ぎないのが現状だ。畜産業での副産物売買は75.1%、養殖漁業では90%、林業では50.2%という数字になる。

畜産局のトン・スアン・チン副局長は今後、米ワラの収集や梱包、輸送などの技術革新とともに、市場は拡大するとみている。農家にとっては、収穫後のワラの販売だけでも、1ヘクタールあたり平均約55万ドンの収入増が見込めるという。

◇循環型農業の実現を
農業副産物の再利用について詳しいボー・トン・スアン博士は、農業副産物の収集と再利用について、「温室効果ガスの低減につながるだけでなく、農家の収入の増加に役出すことになる」と断言する。現状では、ベトナムの養殖魚介類の加工品製造業界は、副産物活用がいまだ2億7500万ドル規模にしか達していない。だが、100トンに近い副産物の全量を、ハイテク技術を応用して健康補助食品や化粧品などに加工できれば、農業収益は40億~50億ドル増えるだろうとスアン博士は考えている。

ベトナム農業科学アカデミー生物学研究所のグエン・クアン・タック所長は、農業副産物の処理に高度な技術を適用する必要があると指摘。「1億5700万トンもの農業副産物は、非常に貴重な原材料源になるはずで、うまく活用できるようになれば、循環型農業の発展につながる」と話す。

経済的な視点からも、「ベトナムは、自国の農産物や農業副産物に付加価値を与えたいのであれば、農業副産物の活用に対して投資を促す政策の採用を進める必要がある。

政策は、循環型農業の実現を促すもの、さまざまな段階をつなぐ一方通行の流れのほか、自然にやさしい農業や持続可能な発展など幅広い分野をカバーする必要がある。また、農業副産物の処理技術の研究開発や実行手法などをより効率的に推し進めるための努力が望まれるとともに、高度でクリーンな技術の研究、開発、移転および適用の効率を上げるための努力が今後は求められる。

農業農村開発省のチャン・タイン・ナム副大臣は、「農業分野の発展のためには、農業副産物を十分に活用してさまざまな産業の原材料を生み出し、それらを活用した循環農業の連鎖の実現を開拓する必要がある」と強調している。