石炭とガスの価格が高騰し、世界各国でエネルギー危機となっている。このことから、ベトナムの電力網も今後、増加し続ける一次エネルギー需要に見合った供給ができるのか否か、専門家らの間でも懸念が高まっている。ベトナムは今後、エネルギーの安定供給のために、どのように行動すべきなのだろうか?

◇世界的危機の影響
現在、中国をはじめ、ヨーロッパの主要各国で、エネルギー危機が起こっている。エネルギー・グリーン成長研究所(CEGR)のハ・ダン・ソン所長は、「北半球各国が冬場の燃料を購入する時期に、新型コロナウイルスの感染拡大の終息が見え始め、世界的な経済回復にむけたエネルギー需要が重なって、化石燃料の需要を押し上げたことに起因する」と、その原因を指摘する。加えて、米国やノルウェー、ロシアや中東からの限定的なガス供給量をめぐり、ヨーロッパやアジア諸国の間で輸入競争が始まったことで、天然ガスの価格も高騰したという。

ガス価格の高騰によって、一部の国々はコスト削減のために、ガスの利用を石炭に切り替えた。これが今後、供給不足や価格上昇のリスクにつながる可能性があるため、従来からエネルギーの中でも石炭の比重が高かったアジア諸国にとっては大きな重圧となりそうだ。

経済の専門家らは、現在のエネルギー危機が燃料価格を引き上げ、輸入燃料を使う発電所のコスト増加につながるなど、ベトナムにも大きな影響を与えているとみる。

ベトナムはそのエネルギー構造を、再生可能エネルギーの割合を増やす方向で変革させている最中だ。だが一方では、社会経済の発展のためには、手ごろな電気料金で、十分な電力量を安定供給する必要がある。さらに気候変動の影響によって今後、水力発電では電力供給に必要な水量が得られなくなるという可能性もあるのだ。

◇適切なエネルギー量
ベトナムエネルギー連合のダオ・ニャット・ディン氏は、電力供給に占める再生可能エネルギーの割合を、一定期間は、適切な割合で維持するよう、ベトナムのエネルギー業界に注意を促している。

この点に賛同して、エネルギー・グリーン成長研究所(CEGR)のハ・ダン・ソン所長は、「エネルギー供給源の分散化や、再生可能エネルギーなど新たなエネルギー源への転換は、化石燃料への依存を減らすための長期的な選択肢だ」という。だが、これは適切な切り替え戦略と、地域や国をまたぐ広域的な送電網の構築、エネルギー貯蔵技術の発展などへの計画的な投資も必要だ。

輸入燃料に関しては、短期的、中期的な燃料購入にあたってはベトナムが主導権を握り、燃料貯蔵設備のインフラ整備に投資を行う必要がある。「2021~2030年の電力開発国家計画および2045年に向けたビジョン」(第8次国家電力マスタープラン、PDP8)では、石炭エネルギーの使用削減と代替としての液化天然ガス(LNG)利用の増加が盛り込まれており、燃料供給の長期的な契約を適正価格で獲得することが、とりわけ重要になっている。

第8次国家電力マスタープランでは、1990~2020年にかけての経済やエネルギーの発展状況や、今年年初の第13回共産党大会で示された社会経済発展目標やその2030年の実現に向けてのシナリオ、2021~2025年にかけての社会経済発展方針、そして国の社会経済発展10カ年計画などを、将来的なエネルギー使用量の予測分析のデータに活用している。

これらによると、今年から2030年にかけて、商用の電力使用は最低でも8.52%、多ければ9.36%、増加する見込みだという。