新型コロナ感染の監視装置、公共の場所で運用へ 自動で体温測定や本人確認

ベトナム科学技術アカデミー(VAST)傘下の情報データ処理センターの研究者らがこのほど、人の体温測定や病歴などの個人情報の読み取りなどを自動で行い、新型コロナウイルスへの感染リスクが高い人を検出する装置を開発した。公共の場の入り口に設置することで、出入りの可否を判断するスタッフを配置する必要がなく、効率的な感染拡大予防に役立つと期待される。

◇全自動対応の利便性
今回完成した監視装置は、「CLi スマート・アイズ(CLi-SmartEyes)」。情報データ処理センターのファム・ホン・クアン准教授と同僚らが開発した。小型の箱状装置で、市民が割当てられたQRコードをスキャンする機能のほか、全自動で体温測定、顔認証、酸素飽和濃度の計測を行い、さまざまな情報を集約できる。

ベトナムは今、新型コロナウイルスの感染再燃を警戒しつつ、段階を追って経済活動を再開させる段階にさしかかっており、クアン准教授は「今後は、公共の場所などの厳密な管理が必要だ」と話す。保健省の予備試算によると、省当局の施設などの公共施設や企業、工業地帯、病院、学校、バスターミナルや集合住宅など全国の施設など、今後、約650万カ所で、感染拡大予防の対策として、体温測定や個人情報が搭載されたQRコードの読み込みなどが行われる見込みだが、これを全て人が行うと最低でも650万人の雇用と賃金が必要になってくる。

そこで開発されたのがこのコロナ感染者の検出や監視に役立つ装置だ。コンピューターと画面、カメラや赤外線による体温センサー、顔認証システム、QRコード読み取り機などを1台にまとめ、音声で結果を伝える仕組みも搭載されており、人手を大幅に削減できる利点がある。

建物や公共の場に立ち入ろうとする人は、センサーから約3センチのところまで顔を近づけて体温を測定し、顔認証によって個人を特定。装置は、読み取ったQRコードから瞬時に医療申告の内容や過去の病歴、ワクチン接種歴、新型コロナウイルス検査の結果などの情報を読み取り、感染リスクの有無を判定する。データは画面に表示され、建物への入館などに適していないと判断された場合は、警告音が鳴る仕組みになっている。

保健省はさらに今後、感染があった場合には、収集された情報を患者追跡にも応用する考えだ。

◇人工知能の活用
「CLi スマート・アイズ」の開発には、過去に都市交通の管理装置の開発経験などをもつIT技術者ら20人余りがかかわった。開発チームは装置のハードを設計すると同時に、2020年年末ごろに、ソフト開発に乗り出し、何度も実験や改善を機繰り返した後に、ようやく今年8月に装置を完成させたという。

市民らに割り振られたQRコードから読み取られるさまざまな医療関連の記録が、本当にその場にいる人のものだと確認するために、高度な顔認証技術を応用し、他人の記録の不正利用を発見できる仕組みも備えられている。

さらに、呼吸機能の低下の指標となる酸素濃度(SpO2)の測定が必要な場合は、センサー部分に指を置けば、数十秒で測定が完了。酸素飽和濃度と心拍数などのデータが画面表示される。これらの結果を総合的に見て、その人が感染している可能性があると判断すれば、装置が音声や文字表示などで、最寄りの病院に行くよう指示するという。

装置がベトナム独自の技術を応用し、ベトナム国内で製造されていることで、「CLi スマート・アイズ」は輸入製品と比べて使い勝手がよく、価格も抑えられるという利点がある。追加の機能搭載やデザイン変更なども可能で、オプションなどによって価格はさまざまだという。

この装置を使えば、建物などの入退に必要な医療申告や健康状態の診断が一人当たり十秒ほどで完了する。すでにハノイ市のホアンキエム区にあるクアドン人民委員会本部の建物や、ハンダー市場、ベトナム科学技術アカデミーの本部などで利用が始まっており、活用は今後さらに増える見込みだ。