企業の「ゼロ廃棄物」循環モデル ベトナムでも拡大

多くの多国籍企業が廃棄物ゼロを目指し、原材料供給などの工夫を始めている。簡単なゴミ廃棄に代わって、別の形に変えてのリサイクル利用や、消毒殺菌したビンなどの商品容器をそのまま再利用する手法だ。自然環境を汚染するプラスチックゴミの問題が注目されているベトナムでも、世界での実施例を手本に、導入が始まっている。

◇ごみゼロの消費行動へ
循環型経済のなかで、廃棄物の収集やリサイクルに加え、廃棄物をゼロに近づける原材料供給網の実現は、廃棄コストの削減などにつながる有効な経営手法として、多くのメーカーが採用し始めている。

その先駆者的存在が、米国で2019年に設立された民間リサイクル事業、テラサイクルの循環型のショッピングプラットフォーム「Loop」だ。新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの企業がオンラインによる宅配サービスを始めたが、Loopはここにエコ視点を盛り込んだ。宅配に使われる梱包材付き宅配ボックスから商品そのものの容器に至るまで、すべてがそのまま再利用できるのだ。アメリカ、フランス、英国に続いて、今年の8月末には日本でも、東京都の協賛を得て、5000人規模での実験的プロジェクトが始まったばかりだ。

プロジェクトに参画した味の素は、オシャレなデザインで繰り返し使えるガラス容器に入れて、自社の調味料の販売を始めた。ラベルに至るまですべてがリサイクルまたは再利用することができ、発生するゴミはゼロに近い。まだ日本での実用規模は首都圏に限られているが、プロジェクトが成長すれば、プラスチック削減に大きなインパクトを与えることになるだろう。

Loopの特徴は、オンラインでの商品注文や支払いの実施に加えて、容器の回収と滅菌処理を行って、再び商品の容器として活用させるという一味変わった購買方法だ。

Loopと味の素の連携は、2030年までにプラスチック廃棄物ゼロを実現するという味の素の目標が背景にある。このために、同社やグループ企業は、生分解性プラスチックや植物由来素材の利用でプラスチック利用の削減を進めている。例えば、味の素フィリピン社は、パッケージの大きさと厚みを低減させた。さらには、持続可能な慣行を日常生活に取り入れ、地球上の限られた資源を賢明に、かつ効率的に使用しようと市民に呼び掛ける啓発キャンペーンも開始している。

◇ベトナムでも始まる環境に配慮した企業活動
ベトナムでも、環境に優しい、ごみゼロ施策の実施が始まっている。だが、ベトナムの場合は大企業ではく、ベトナムの比較的小規模な飲料メーカーで始まった。

ベトナムのビール大手、ハベコ社は、自社のビールを購入者が飲んだ後、容器を返せばお金が一部帰ってくるというデポジット制の仕組みを展開してきた。回収されたこれらのビンや容器は殺菌消毒され、再利用される。同様の試みは、豆乳メーカーでも採用されたほか、フルーツジュースの販売などでも活用されている。

また、ベトナムで積極的に環境配慮型の商品開発に当たっているのが、ベトナム・ユニリバー社とネスレだ。ネスレ社では、ゴミの発生をゼロに抑えるという自社目標の実現のために、容器の再利用や原材料の仕組みなどを行っている。

ベトナム・ユニリバー社の場合、危険物を含む廃棄物の埋め立て処分を減らす努力を続けている。同社はベトナムを含め、世界中の傘下企業の240の製造施設で、廃棄物発生ゼロを達成し、この結果、14万トンの有害物質を地中に埋め立てる代わりに有効活用できたという。
このモデルを応用し、廃棄物の削減、再利用、回収、リサイクルの4つの「R」アプローチを用いることで、同社は世界の400近い製造拠点で廃棄物の埋め立て処分をなくすことができたという。これらのことは、工場での廃棄物を原材料にした建材製造や、社員食堂の食品廃棄物の堆肥化など、企業のゴミが代替用途を備えた資源であることを証明している。

このようにベトナムでも、事業展開する日曜消費財メーカーや小売業者、卸売業者などが、プラスチック包装を最小限に抑え、リサイクル措置を講じ始めている。一方で、ベトナムパッケージリサイクル機構(PROベトナム)や「ノー・プラスチック廃棄物を実践する企業同盟」など、廃棄物のリサイクルや管理などを実施する組織も設立され、活動を始めている。