ベトナム科学技術市場の進展 法整備や情報共有などが必要

ベトナム政府はこのほど、2030年に向けた「国家科学技術市場開発プログラム」を採択した。ベトナムは、科学技術市場の進展に力を入れ、関連商品の輸出増加を加速させている。2030年までに、科学技術関連の輸出額を全輸出品目の約30%、主要輸出品目においては約35%にまで引き上げたい考えだ。

◇にぎわう科学技術市場
科学技術省のチャン・バン・トゥン副大臣によると、ベトナムの科学技術市場はこの10年間にさまざまな困難に直面したが、同時に前向きな成果も得ることができたという。特に科学技術をめぐる枠組みの構築や政策立案などでは、環境が充実しつつあり、需要と供給のマッチングの向上や仲介市場の仕組み形成などにつながったという。

具体的には、この間に800以上もの科学技術仲介組織がつくられた。科学技術関連の技術や商品の取引を担う商品市や展示会なども、2015年以前は8カ所しか存在しなかったのが、2015年から2020年にかけて全国に広がっていった。

2015~2020年の国家科学技術市場開発プログラムは、多大な投資を集め、参加企業も売買取引も増えた。科学技術市場をPRするためにさまざまなイベントが企画され、技術を求めたり、売ったりしたい企業や研究施設などを結び付ける場となる「テックデモ」や「テックマート技術機器展」などが開催され、科学技術の応用や技術移転など3000件以上もの契約へと結実した。

その一例であるサイゴンハイテクパーク傘下の「SHTPラボ」は、数十点もの実用的なハイテク技術を製品化し、市場に投入している組織だ。ラボのゴ・ヴォー・ケ所長によると、2020年には、同ラボの9件のプロジェクトで技術が実用化され、3件が商品化にこぎつけたという。この中には、メディワールド社と共同開発したナノ銀素材を応用したドライクリーニング用ゲル溶剤や、バック・トゥー社とともに商品化した洗口剤「ASINマウスウォッシュ」などがある。

独自の研究開発を進めるのと同時に、SHTPラボは研究課題やプロジェクトなどを国内外の企業との共同開発事業へ転換する事業も始めており、研究の進展と製品化や商業化、国内外市場への技術紹介などを組み合わせて事業展開していくことを目標としている。

◇周辺整備の充実を
今後2030年までのベトナムの科学技術発展の方向性を定めた新たな「国家科学技術市場開発プログラム」では、改革の促進や民間企業の技術能力、競争力などの改善において、「科学技術市場が重要な役割を担うだろう」としている。計画では、2030年までにベトナムにおける知的所有権の譲渡件数は現状の約2割増となり、先進国からの技術移転が技術移転全体の約35%を占めるようになる見込みだ。ベトナム国内での技術取引では、40%が研究機関や大学からの技術移転となる。

ベトナム科学技術省のチャン・バン・トゥン副大臣は、「科学技術の発展には、技術の需給システムの充実、技術を共有できるようなインフラ構築、能力の高い仲介組織などが必要だ」と話す。また、法的側面から、知的財産の評価やその評価基準の策定、企業への資本貢献のメカニズムの確立、市場への科学技術製品参入可否を決定する基準の制定などの充実も必要だという。

さらに、科学技術が他の商品やサービスなどの市場、労働市場や金融業界などとも連動して動く必要があると指摘。今後は技術移転や科学技術関連製品の売買などの仲介交渉において企業を支援するほか、企業が売買する製品の品質基準認定なども整備する必要がある。

科学技術市場の土台となり、関連省庁や地方公共団体などが連携して共有できるようなデータベースづくりや、科学技術の譲渡移転などをめぐるデータ分析のしくみづくりなども求められる。技術や技術関連商品などを売り買いしたい企業、仲介者、公営機関などの支援となる周辺のデジタル化、データの統合など周辺の整備も急ぐ必要がある。