飲料カートンの回収より簡単に リサイクル回収用アプリに容器大手のVECA社が参加

消費者が廃棄物をより簡単にリサイクルに出せるよう、飲料容器などを製造するテトラパック社はこのほど、リサイクル促進事業を展開するホーチミン市のベンチャー企業、VECA社との提携を発表した。VECAのスマートフォン用アプリを使い、飲料の紙容器(カートン)やパッケージなどをより簡単にリサイクル回収できるようにするもので、市民らのリサイクルへの関心を高め、ゴミ削減につなげる。

ホーチミン市で廃品回収などを行うVECA社のスマートフォン用アプリ「VECA」は、リサイクル可能な廃棄物を捨てたい個人などと、回収業者を結び付けるというもので、すでに2万人の利用がある。タクシーの配車アプリと同じ技術を使い、廃棄物を売りたい人が廃棄物の種類や量などを通知し、この情報を見て、購入を希望する業者が買い取り価格などを提示する。

VECAは、ベトナム語で廃棄物を意味する「ve chai」をもじったもの。廃棄物を売りたい人が取引相手を選びやすいよう、業者の名前を公開したり、地域ごとの回収価格の相場などを明示したりするなど、回収や価格設定の透明性に定評がある。これまで扱っていた紙やガラス瓶、プラスチック、金属に加え、テトラパック社との提携で飲料などの紙容器が対象に加わり、今月13日から回収が始まった。

テトラパック社は、社員数約2万5000人、160カ国以上で製品を販売する世界的なパッケージメーカー。業界を率先する立場から、持続可能で自然環境に配慮した循環型ビジネス展開を模索しており、今回の提携につながった。同社はこれまで、提携企業などと協力し、全国に63カ所の容器リサイクル回収拠点を設けていたが、VECAの技術プラットフォームを活用することで、各家庭または事業所単位で集めた飲料容器などが、より容易にリサイクル素材として提供できるようになる。

テトラパック社のサステナビリティ事業部門統括者、リ・クィン・チャンさんは、テトラパック社が目指すリサイクルが、最終的には「各家庭や学校、飲食店や職場などを含め、どこでも容器回収ができるシステムを構築すること」だと説明。「これが実現できれば、紙容器類を含めた廃棄物を分別し、再利用につなげる社会文化の形成に大きく近づくことができ、天然資源の利用低減や自然環境の保護につながる。デジタル技術の応用は、このゴールに近づくためのカギと言える」と力説する。

VECAの共同創立者であるドー・チー・ミン・チャンさんによると、VECAでは対象とする廃棄物の種類の拡大を含めて、アプリの改善を模索していたところだったという。ベトナムでは、牛乳やジュース類などの消費が増え、紙カートンや飲料パッケージの廃棄が急増していたが、これらがリサイクルに適した素材であるにもかかわらず、十分に活用できていないと感じていた。テトラパック社のVECAへの参加で、カートン類の回収が増えれば、「環境に優しいだけでなく、リサイクル業者にとっても大きな利点がある」とチャンさんは説明する。

今後6カ月間は試験期間とし、VECA社は、ホーチミン市の1区、3区、4区などとフーニュアン地区、ビンタイン地区、タンビン地区など、10の行政地区を対象に、紙カートンの回収事業を展開する。回収した紙カートン類は1キロあたり「1スター」に換算され、スター1つならプレゼント用包装用紙、スター3つならリサイクル紙を使ったノート、スター5つで布製のエコバッグまたは6ロール入りのトイレットペーパーなどに交換できる=写真㊦。交換される景品はいずれも、リサイクル素材が原料に使われている。

循環型の低炭素経済の実現を目指し、テトラパック社は、自社のバリューチェーンの川上から川下まで再生可能な素材を使い、二酸化炭素排出を減らそうと努力を重ねている。紙容器は原材料の75%が段ボールなどのリサイクル素材や、適切に管理された森林由来の素材であり、容器そのものも使用後、再びリサイクル活用できる。

同社の最終的な目標は利用する容器原材料の再生率を100%にするということだ。リサイクルに関するインフラ整備として、同社はベトナム国内の回収業者の支援展開を続け、再生原材料製品の利用率を引き上げ、その品質を高めていくことだ。特に紙カートンの回収とリサイクル利用を大規模展開するために、同社はメガマーケットやロッテマートなどの大手小売店とも提携し、大都市の店舗で、紙容器の回収場所を設けている。さらに、ベトナム国内の大手飲料・食品メーカー8社と提携して、「ベトナム・パッケージリサイクル同盟」を結成し、2030年までに全容器類のリサイクル活用を目指している。