河川流域の水資源保護を強化へ 生物多様性の維持や隣国との協力も

3月14日は、河川の重要性を再認識する「川のための国際行動デー」だった。 河川の維持保全が世界的な生物多様性の回復のカギとなるというのが世界的な認識だが、豊かな水源をもつベトナムも、各国と歩調を合わせて政策を共同展開し、さまざまな計画を実行していくことが求められている。

淡水系水源における生物多様性が、かつてないほど損なわれているという現状を反映して、昨年秋の第一部開催に続き、国連生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議の第2部が4月、中国・昆明で開催される。淡水系での生物多様性維持の問題を解決するために、また国と将来の世代、人類全体の未来のためにも、ベトナムは、生態系の劣化を防ぐための緊急対応と抜本的な行動の両方の取り組みを同時に行っていかねばならない。

ベトナムは2020年、環境保護法を制定、今年1月10日にも関連政令が発効された。天然資源環境省環境行政局のグエン・トゥン・ヒエン副局長は、「いずれも環境汚染を制御し、生物多様性を維持することを目指して、さまざまな規制が盛り込まれている」と説明する。

さらに、ファム・ミン・チン首相はこのほど、「2030年までの生物多様性をめぐる国家戦略および2050年までのビジョン」を承認した。これは、今後、ベトナムが自然と生物多様性の保存について優先すべき事項を明らかにしたもので、自然生態系保護区域の拡大▽生態系の完全形や連携を回復し保全する▽生物多様性を持続可能なかたちで活用し、環境配慮型経済の発展を支援すると同時に、地球規模での気候変動に能動的なかたちで適応する―などの内容が盛り込まれている。

水資源の利用を管理し、持続可能なかたちで発展させるという挑戦においては、ベトナムでは1998年、国会が水源法を制定しており、これ以降、河川流域における統合的な水資源管理適用へと舵を切った。

2022年に関しては、天然資源環境省傘下の水源計画調査センター(NAWAPI)が、ベトナム北部の紅河(ホン川)デルタとタイビン川流域、そして南部メコンデルタのメコン川(クーロン川)流域を対象とした全体計画の作成し、チン首相に承認のために提出するよう命じられている。

水源計画調査センターのトン・ゴック・タイン所長は、「これらの計画策定のために、同センターでは追加で必要な文書やデータ集めに奔走している」と話す。センターでは、メコンデルタの河川や水源の管理や利用、持続可能な開発などを指南するワークショップも企画しているほか、メコンデルタ流域の水質や自然環境評価なども継続して展開していく。

一方、ベトナム国家メコン委員会常任事務所のグエン・ティ・トゥ・リン所長代理は、「水力発電所の開設などをはじめとする河川流域の開発活動について、多くの国や地域が、河川の流れや水量の変化に加え、地域住民の生活習慣激変などによって、周辺環境に悪影響が及ぶとの懸念の声を上げている」と指摘する。

同事務所では、メコン川での水の利用をはじめ、上流域諸国のメコン川水源についても注意深く見守り、適時、河川流域部の状況や浮上してきた問題点などについての報告を発信していくという。また、ラオス、カンボジア両国と、二国間協力を加速し、さまざまな環境データを共有しつつ、ベトナム・カンボジア間の国境周辺での水の活用制限について、交渉を進めていくとした。

これらの取り組みに加えて、同事務所では、水源法やさまざまな政策の改定に取り組んでいくほか、水の安全保障に関するプログラムやプロジェクトの推進などにおいて、国内関係当局と連携し、海外のパートナー団体などとの結びつきを強化することで、「国としての水源管理の務めを果たしていきたい」(リン所長代理)という。