ハノイ科学工業大、航空学科で初の卒業生 エアバス社が支援し30人輩出

航空宇宙産業が盛んなフランスの業界団体の全面支援を受けてハノイ科学工業大学に設置された航空工学学科からこのほど、初の卒業生となる学士30人が卒業した。航空機のメンテナンスや運用にかかわる高度技術を身に着け、今後のベトナムの航空業界の発展に寄与すると期待されている。

ハノイ科学工業大学の航空学科は2018年、フランスの航空大手エアバス社を中心に、昨今「エアロスペース・バレー」と呼ばれているフランスの航空宇宙産業クラスターのメンバーらと提携して設置された。エアバス社とフランスの国立航空大学(ENAC)、航空宇宙工業会(GIFAS)傘下で航空宇宙分野の教育訓練を展開する航空宇宙機構(IAS)が全面協力。ベトナム側からは、航空機のメンテナンス事業を請け負うベトナム航空機エンジニアリング社(VAECO)なども参加し、航空機のメンテナンスや操作などの分野で高いエンジニアリング技術を持った人材の育成を使命としていた。

学科は、4年制の「航空工学コース」と、修士課程の「国際航空輸送業務のマネジメントコース」がある。今回、初の卒業生を輩出した航空工学コースでは、学生たちは工学の基礎を学ぶとともに、航空機のメンテナンスや運用の実地技術を身に着けた。プログラムには、VAECO での実地訓練なども含まれていた。

エアバス社は、これらの教育プログラムの資金提供を行うにとどまらず、内容においても全面的支援。大学は2024年には同コースを完全に自前の運営に移行する計画だが、それまではエアバス社が事業コーディネートなどを担う。現在は、学士・修士合わせて120人以上の学生が登録している。

最初の卒業生らを送り出すにあたり、エアバス・ベトナム支社のチー・マイ・ホアン副代表は「エアバスは、ベトナムにおける航空宇宙教育を大きく進歩させたこの重要なプロジェクトのパートナーであることを誇りに思う」とあいさつ。卒業生らに「私たちが協力して取り組んでいることは、航空分野の将来のリーダーを育成することだ。ベトナムにおける専門知識や能力の構築に大きく役立つでしょう」と卒業生らを激励した。

同大学のコース主任を務めたジャンマルク・ラヴェスト教授は、「本学における航空教育は、大学と、フランス、ベトナムの航空業界の主軸となる企業群が共同でがんばってきた成果だ。業界の求める人材を的確に理解し、構築されたプログラムであり、最初の卒業生を送り出せたことは、プロジェクトの成功を示す第一歩だ」と称賛した。

ベトナムの航空業界においては、エアバス社の存在感は絶大だ。ベトナムの国内便で主に利用されている、通路が一本の「シングルアイル」と呼ばれる同社の小型ジェット旅客機のほとんどが、同社のA320機で、ベトナム航空、ベトジェット、バンブー、ベトトラベルやパシフィック航空が採用している。さらに大型旅客機でも、ベトナム航空がすでにエアバス社の新型長距離機A350を運用しているほか、ベトジェットも最近A330の運用を始めたところだ。

エアバスとベトナム航空業界の間での提携も、幅広い分野で行われている。主なものには、アルタス・ベトナム社や航空機用部品製造の日機装の現地子会社、ニッキソウ・ベトナムなどとの長期提携があり、A320やA330、A350といった機種の製造にかかわってきた。

同時にベトナム情報通信大手のFPTと共同で、アジア太平洋地域での航空業界向けデジタルプラットフォームの強化と発展に取り組んでいる。これには、ソフトウェア利用者とともに、ベトナムや東南アジア一帯でソフト開発に携わる人材を対象とした教育訓練システムも含まれている。

このようなエアバス社のプログラムは、これまでにベトナム国内で高度技術を有する人材1500人以上もの雇用を創出してきたという。