ベトナムの衣料品業界、ゼロ・エミッション達成へ海外からの支援

2050年までに、廃棄物を排出しない「ゼロ・エミッション」を達成するという政府の公約を実現するため、ベトナムの繊維・衣料品業界は、「グリーン生産」の目標達成と排出削減に向けた取り組みを続けている。

写真㊤=エネルギー転換は、ベトナムの繊維企業の排出削減に貢献する

世界のファッション業界は、衣料品の生産工程で排出されるCO2が気候変動の要因の1つであると認識するとともに、同時に業界自体もその気候変動の影響を受けている。さらに、欧州の法律、特に2023年に施行されるドイツのデューディリジェンス法は、ブランドや多国籍企業に対し、サプライチェーンにおける環境汚染や人権侵害などの社会的リスクを特定、予防、軽減し、それらに対し責任を負うよう強く求めている。そのために多くの有名ファッションブランドや繊維メーカーは、気候や環境に関連した目標を設定している。

ベトナムの繊維・衣料品企業が、資源やエネルギー、化学物質の効率利用を通じて排出量を削減できるよう、ドイツ国際協力公社(GIZ)とフランスのスポーツ用品店「デカトロン」は、ベトナムにおける繊維サプライチェーンの環境対応の向上に関する覚書を締結。そして、GIZはデカトロンベトナムとともに、2つのプロジェクトで提携する。

そのプロジェクトは、「持続可能なバイオエネルギー市場による気候保護」と「アジアの衣料産業における持続可能なビジネスと責任ある業界の慣行の育成と実施(FABRIC)」であり、デカトロンのベトナムのサプライヤーが、工場での気候変動対応や水利用、エネルギー効率、化学物質管理を改善できるよう支援する。

具体的には、GIZ FABRICプロジェクトでは、プラットフォーム(www.atingi.org)を介して、Eラーニング「Climate Action Training」と「e-REMC - Chemical Management Training」を開催する予定だ。Climate Action Trainingでは、気候変動に関する基礎知識、温室効果ガスの排出量の算出と削減のためのソリューション、エネルギー効率と再生可能エネルギーの観点からのソリューションを提供する。e-REMCでは、ベトナムの繊維工場が、持続可能な化学物質管理システムを改善し、実施する支援を行う。

GIZ FABRICのディレクターであるマーク・ベックマン氏は、「気候変動への取り組みでは、サプライチェーンにおいて繊維・衣料品工場の能力を向上させるために、国際的なブランドとの連携が必要だ。今回のコラボレーションは、非常に重要かつ緊急の課題だと考えている。これらの革新的なアプローチによって、サプライヤーは、環境対応を前進させ、それによって国際的なサプライチェーンにおける競争力のある企業として位置づけられるようになる。コラボレーションから得られる学びは、地域的、世界的にも、業界に利益をもたらすだろう」と強調する。そして、「FABRICプロジェクトは、学習者が無料のオンライントレーニングプラットフォームを利用できるとともに、関係する政策立案者と成功事例を共有し、他国への展開をサポートする」と続けた。

デカトロンは、100以上の工場に対して、バイオエネルギーや再生可能エネルギーの利用を促進するトレーニングコースを提供し、バイオマスのサプライチェーンに関する研究も支援する。

ベトナムは農業国であり、化石燃料に代わる再生可能エネルギー源として、その需要に応えることができるバイオマスエネルギーに大きな可能性を持っている。