新型コロナウィルスの流行で、ベトナム国内の観光地の多くが大きな影響を受けている。麻織物で知られるハザン省クアンバ県のルンタム村もその一つ。村では感染防止を講じながら、特産品の麻織物の生産再開に取り組んでいる。

写真㊤=色鮮やかな麻織物の製品。バッグやスカーフは人気商品だ

ミエン川が流れる山間にひっそりとたたずむルンタム村。ここではムオン族が、何世代にもわたって麻織物や藍染、蜜蝋画、刺繍など優れた工芸品を産み続けてきた。

1998年、スン・ミ・クァさんとマイさん夫妻は、住民から出資を募りホップチェン麻刺繍工房を設立。2001年には、ホップチェン・ブロケード織組合に名称変更、衣服やスカーフ、バッグを生産しており、みやげものとして、またホテルやレストランの室内装飾としても人気がある。


麻織物を仕上げるには、何十もの行程がある。根気と集中力のいる仕事だ

麻染物には41の工程がある。カラフルな衣装を作るには1カ月から数カ月かかる。藍染めもまた根気のいるきつい仕事で、ねらい通りの色にするには何度も染めの工程を繰り返さなければならない。深みのある色にするには時間がかかり、気候にも大きく左右される。雨が降ると、作業が2カ月におよぶこともある。

現在、組合では、20種類以上の製品を作っており、さまざまな団体と協力しなから、海外からの訪問客や刺繍愛好家に商品を紹介している。マイさんは2008年と10年、11年、在ベトナム仏大使から、クリエイティブで精力的な女性を表彰するクラフトフェアに招待された。クラフトフェアへの参加は、ムオン族の工芸品が広く世界に知られるようになる絶好の機会となった。今日、組合の製品は、フランスをはじめ米国やイタリア、イスなど20カ国以上に輸出され、その収益は地域を経済的に潤すだけでなく、ムオン族の伝統文化継承にも役立っている。