赤い袋の〝お年玉〟 旧正月の魔除けの風習

赤は、東アジアで「幸運」を表す色。ベトナムでも古くから赤は縁起の良い色、福を招く色とされてきた。旧正月に、子供たちに渡される〝お年玉〟も、赤いポチ袋に入れるのがならわしだ=写真。

〝お年玉〟の風習は古い伝説にちなんでいる。昔、あるところに、若い夫婦が暮らしていた。やがて、待ち望んだ赤ちゃんが生まれた。しかし、とある大晦日の夜、夫婦が寝ているすきに悪魔が現れ、子供の頭を触って病気にしてしまった。

夫婦が悲嘆に暮れる中、ある日、神様が夫婦の家の前を通り、夜な夜な悪魔がやってきて子供を病気にさせていることを知った。神様は一計を案じ、子供を守るために、硬貨に姿を変えて、自分を赤い紙の中に入れて、子供の枕元に置くように夫婦に言いつけた。そしてその夜、悪魔はやってきたが、神様が姿を変えた硬貨の輝きを恐れて子供に近づけず、そのまま逃げ帰ったという。この話が広がり、やがて旧正月に、魔除けの意味を込めて、赤い封筒に入れたお金を子供たちに渡す〝お年玉〟の習慣が広まったという。

今日では〝お年玉〟を、子供だけでなく学生や困窮する人、年長者や尊敬する人々にも渡すようになった。時代とともに風習は変わっても、〝お年玉〟が愛する者に寄せる「思い」や「願い」であることだけは、これからも変わることはないだろう。