マムトムを使ったハノイ名物 マムテップチュンチの深い味わい

ニョクマム(魚醤)と並んで、ベトナム料理に欠かせない調味料がマムトムだ。「塩辛いエビ」という意味で、小エビを発酵させて作る。豚ひき肉などと炒めると、甘く香ばしい風味に仕上がる。このマムトムを使った代表的な料理がマムテップチュンチ(豚ひき肉をマムトムで炒めたもの)。今やフォーやブンチャー(グリルした豚肉にビーフンを添えた料理)と並ぶハノイの名物料理となっている。

写真㊤=ハノイのハンベ市場からブームに火がついた名物料理、マムテップチュンチ(Photo ocopmart.vn)

マムトムの生産地の一つが中部グアン省。地元のメーカーでは、海水で洗ったエビをコメや焼いたトウモロコシの粉と混ぜてから、陶器の瓶に入れてつけこむ。天日にさらして乾燥させること6カ月。白ワインと新鮮な唐辛子を加えて仕上げる。極上のものは、ピンクがかった赤で香りがよく甘みがあり、ごはんや春雨、焼き魚に愛称ぴったりという。


マムテップチュンチは、豚ひき肉とニンニク、乾燥タマネギなどをしっかり炒めてから最後にマムトムで仕上げる(Photo beptusomotvietnam.weebly.com)

この料理は1990年ごろ、ハノイ中心部のハンベ通りの市場から人気に火がついた。今やハノイっ子の定番のおかずになっており、「これだけで、ごはん3杯はいける」と言う人も多い。


網でとれた新鮮な小エビ。これがマムトムの原料になる(Photo haisanhungcuong.com.vn)

おしいいマムテップチュンチ作りには、ほどよく脂ののった豚の肩肉を使うのが最適。ていねいにひいた豚肉に、香りづけの乾燥タマネギ、にんにくのみじん切りなどを混ぜ、油でしっかり炒めてからマムトムを入れて仕上げる。1カ月の長期保存が可能といい、特に冬場に、温かいご飯と一緒に食べるのがベスト。豚の脂とマムテップの甘みが絶妙にマッチする。

マムテップチュンチは現在、全国各地で食べられるが、ブームの火付け役となったハノイのハンベ市場のものが最高とされている。