山頂に生える伝説の茶 シャントウェット茶の深い味わい

緑の山々が連なるハザン省ピンホ地方。山頂に生えるシャントウェット茶の木は、何世紀もの間、地域を見守ってきた伝説的な存在として、数々の民話で語り継がれてきた。その茶葉から作られる茶は、野生ならではの滋味あふれる香りで、多くの人を魅了している。

写真㊤=トリュ・ムイ・ニンさんは毎日山に登り、お茶を摘んでくる

シャントウェット茶は、地元の赤ザオ族にとって特別な意味を持つ。ホアンスフィ県ソングエン村のトリュ・ムイ・ニンさんは、この茶にこだわり人生をかけてきた。高齢にもかかわらず毎日、山頂に登ってはお茶を摘んでくる。


シャントウェット茶茶は地域の赤ザオ族にとって、特別な存在だ

シャントウェット茶は野生の状態で生えているため、化学肥料も農薬も使わない。県内4000㌶の茶畑でもオーガニックな茶畑として認証されているのはわずか10%で、無農薬の茶は貴重な存在。収穫された茶葉は、乾燥後、時期によっては火で温めた部屋に吊るして保存する。


写真㊤=シャントウェット茶について話すニンさんとピン・ホ・ティー協同組合のリ・ムイ・ムオンさんら(いずれも)

製茶業者でつくるピンホ茶業協同組合のリ・ムイ・ムオン副ディレクターは「ニンさんのお茶は、一村一品運動の(OCOP) 5つ星にも認定されており、ピンホの緑茶と赤茶を代表する存在 」と話す。ニンさんのシャントウェット茶は、最初にひと口ふくんだときはわずかな苦みがあるが、やがて甘味が広がる奥行きのある味わいが特徴だ。

「組合では、清潔な原材料、神経の行き届いた加工、透明性の高い情報を添えたパッケージングという3つの原則を守っている」とムオンさん。茶は、流通業者を通してハノイやダノン、ホーチミンと言った大都市で販売されるほか中国やロシア、EUなど海外に輸出される。ムオンさんらの努力によって、製品はブランド力は増し、地域住民の収入にも大きく貢献している。

北部地域で見られる野生の茶は、もともと栽培されたものから派生したと考えられている。人の手を経ず、葉を広げ、深く根を張った茶は、栽培されたものにはない深い味わいがあるとされる。寿命が長いのも特徴で、一般には80年から200年とされるが、野生のものの中には樹齢800年とみられる木もあるという。