外国人観光客を引き付けるハノイの魅力

 外国人観光客を魅了し続ける、ベトナムの首都ハノイ市。その人気の秘密は急速な経済発展にもかかわらず、街のあちこちに残る味わいだ。ハノイを知るさまざまな人物に、その魅力を尋ねた。

屋台の味を楽しむ
 世界出版社のチャン・ドァン・ラム社長は、ハノイの魅力としてまず、西湖(ホー・ティ)に映るチャンコク寺の美しさを挙げる。外国人観光客がおおぜい散歩するロンビェン橋も「ベトナムと西洋・フランスの文化融合が見られる」とラム社長は薦める。

 それとともに魅力だと話すのが食べ物だ。同社長によると、観光・出張・留学・研究―など、外国人がハノイを訪問する目的は異なるが、共通するのは、誰もがハノイの屋台が好きなことだという。

 屋台にいけば、ベトナム全土の食べ物がある。一般的に好まれるのは春巻き、ブンチャー(甘酸っぱいヌックマムにつけて食べる焼き豚とビーフン)、フォー、お粥など。なかでも、フォーは旅行者が選ぶ「世界でもっとも魅力的な食べ物50」のリストにも入っている。ブンチャーやブンタァン(スープに入った具だくさんのビーフン)も、地元の人にも人気のあるハノイ名物だ。

 2002年にベトナムに来たオーストラリア人のマーク・ロワソンさんは、ハノイの食べ物や飲み物にほれ込み、観光客にハノイのおいしい食べ物などを紹介する観光会社、「ハノイ・ストリート・フード・ツアーズ」まで設立してしまった。彼は「ハノイのコーヒーが大好き」なのだという。もう一人、シャントレルニールソンさんも、「ハノイでもう5年間過ごしているが、まだ、この街のすばらしい食べ物を全ては食べつくせてはいない」と話す。

裏通りの魔力
 ハノイの裏通りも観光客を魅了する魔力をもつ。ベトナムの都市のなかでも、もっとも裏通りの多いのがハノイだ。2008年のデータによると、主要な道だけで500本もある。裏通りはさらに何百本もあり、その一本一本にそれぞれの“物語”がある。広いもの、狭いものなどさまざまあるが、どれもハノイの特徴的な美しさを伝えている。

 「ハノイはなかなか把握しにくいまちで、曲がりくねった裏通りが多いが、一歩足を踏み入れると、それぞれに違う多様な建築や景色に出会える」と話すのは、ハノイのフランス文化センターのセンター長兼文化アタッシェであるユベール・オリエ氏。「(ハノイは)さまざまな色があり、いろいろな生活がある。狭い路地裏に身を投じた人なら、親しみやすい人々の笑顔に迎えられるだろう。これは多くの作家や詩人のインスピレーションを刺激し、有名な作品を数々生んできた。これこそがハノイの魅力だ」と絶賛する。

ダイナミックに成長
 イギリス人のデイヴィッド・ロウワーさんは、人々が生き生きしているからハノイの街が好きなのだという。
「ハノイはこれまで住んだ中でもっともいい都市だ。人々が本当に生きているという感じがする。ハノイはダイナミックで活発なまちであり、今もどんどん発展している。家々や寺院、行商人や学生たち、細い裏通りや道端の露天商…みんながよりよい生活を目指して躍動している。見るもの、聞く音すべてから、経済が力強く発展している国ならではの力強さが感じられる」と話す。

 実際、ハノイのGDP(国内総生産)は、ベトナムの他地域の約1.5倍にもなる。各経済分野が経済発展をとげているほか、この街はユネスコに任命され、「平和都市」へと変革している最中でもある。記事の最後を締めくくるのに、この街に何年も暮らしたフランスの農業経済学者、オリビエ・ルナール氏のハノイ評を引用したい。

 「変化にもかかわらず、ハノイのまちは活力に満ち、息づいており、日常生活のなかにも懐かしい昔のままの路地裏がある。目を見開いて歩けば、気づくことだろう。森林に沈んだアンコール・ワット遺跡のように、コンクリートの下でも、ハノイは秀麗の美しさを保ち続けているのだ」。