ベトナムいにしえの地でのスピリチュアル観光 注目集めるバクニン省トァン・タン

「ドゥン川の背後」と呼ばれる紅河デルタ地方バクニン省のトァン・タン地方。この地に何千年も前から根づく詩や歌、絵画のベトナムの歴史や文化、宗教に触れる「スピリチュアル観光」に関心が高まっている。
写真㊤観光客が多く訪れるドゥン川ほとりの涇陽王の神殿

いにしえの地の再発見
古きよきベトナムをめぐるこの旅を始めるにふさわしいのは、ベトナム仏教最古の寺、ザウ寺だ。

寺は187年~226年に建立され、1313年に再建された。伝説によると、チャン・アィン・トン王がかつてザウ寺を9階建てに建立して何百もの部屋を作り、9つの橋をかけたと、その栄華が伝わる。ザウ寺も、ここに祀られていたマンヌォン母仏も、それだけ人々に敬われ、慕われているという証拠だろう。(現在は、マンヌォン母仏はザウ寺から1キロメートルほど離れたメン村のト寺に安置されている。)

ドゥン川に沿って進むと、国の遺跡に承認された特徴的な建築の仏教寺院、ブットタップ寺に着く。ここでは貴重な木製の菩薩像を拝むことができる。他にも、70もの木製の仏像があり、石で造られた橋、木造9階建てで8角形の「バォ・ギェンの塔」などの歴史的な建造物など見どころが多い。

トァン・タンの地は、ベトナムの伝説的な帝王である涇陽王(キン・ズアン・ヴァン、Kinh Dương Vương)とのかかわりが深いといわれ、何千年も前から歴史を蓄積してきた。また、ベトナム北部、紅河デルタの特徴的な土地でもあり、家屋が密集して建つ村々と緑あふれる畑、そしてドゥン川の流れが、幻想的な風景を作り出している。

地域一帯では、さまざまな祭りが残るほか、特徴的な伝統絵画村もある。また、「クァン・ホ」とよばれる伝統的なベトナムの歌や、水上人形劇、ルゥ・ラゥ陶器などの文化も今に伝える。さらには、ブイ春巻き、チャ・ラム豆腐、ボンデンロール、ディン・ト豆のソース、米粉で作るタン・フオンなどの多彩な食文化も忘れてはならない。伝統、静けさと平和が、文化的な体験をしたい人々と願う人々を魅了するのだ。


ブットタップ寺

 

潜在的な観光客の喚起を
トァン・タン区のレ・ディン・タン人民委員長によると、同区では観光発展を目指しており、特に精神や信念などのスピリチュアルな側面と、工芸・芸術関連の観光に力を入れていく考えだという。

最近、さまざまな旅行会社が観光客を連れて一帯を訪れ、このような観光内容を展開することが増えている。例えばAPTトラベル社はザウ寺、ブットタップ寺、涇陽王神殿、ベトナム伝統の版画で有名なドンホー絵画村、チュア・コ寺の訪問などをツアーに組み入れた。希望する観光客は、静かなドゥン川の川辺を自転車で散策したり、自分でドンホー絵画の版画を作ったりする体験もできる。


グエン・タン工芸村では、特徴的なドンホー絵画に触れることができる

バクニン省での観光に力を入れる旅行会社フォン・ホァンのダン・ビッ・ト社長やビエットトランツアー社のファム・タン・タム社長などによると、トァン・タン区はハノイから近いうえに、特徴的な精神性と文化が体験できるので、観光客を連れて案内することが増えているという。特に、初春の観光客の数は大きく増加しているそうだ。

しかし一方で、増える観光客に対して、まだ交通インフラやトイレ、飲食店などの施設整備が追いついていない。APTトラベル社のグエン・ホン・ダイ社長は、「不十分だったり、標準に満たないサービスや施設は、地方行政当局の対策や計画実施を待たず、どんどん民間の力で整備していきたい」と意欲を示している。