伝説のゾウの化身、パック・タ山 エコ観光の名所に トゥエンクアン省

美しい詩的な景色と数々の伝説で知られるトゥエンクアン省のナハンは、昨今、エコツーリズムの名所となっている。特に見逃せないのが、鏡のようなナハン湖のほとりにあるパック・タ山。伝説では、ゾウが姿を変えたとされる、切り立った不思議な形状の山だ。

そのゾウの伝説をご紹介しよう。この辺りの森林には昔、多くの貴重な動物たちが生息しており、何百頭ものゾウがいたという。ある年、ナハンは、隣国との戦争に巻き込まれてしまった。人々は、ゾウを戦いに行かせることにしたのだが、あるオスのゾウだけは、たいへん猛々しく、ある熟練したゾウ遣いが、この象を制御するよう命じられた。

ゾウ遣いは村人たちに、象が暮らす場所の周りの小川を堰き止めさせると、近くの岩のくぼみに、酒をなみなみと注いだ。水がなくなり、のどの渇きをガマンしたゾウは、5日目にとうとうその酒を飲んだ。これをきっかけに、ゾウはゾウ遣いになつき、言いつけに従うようになった。村の人々は、このゾウを「酒のゾウ」と名付けたという。

「酒のゾウ」は、戦場に送られても、ゾウたちのリーダーとして勇猛に戦い、国は勝利することができた。王はゾウの戦いぶりを高く評価し、公爵の位を与え、勝利を祝う宴を開いた。「酒のゾウ」は、ふるまわれた酒をすべて飲みほすと、そのまま死んでしまった。

ゾウは死んでも雄大で、大きく、立ったままの姿だった。その夜、「酒のゾウ」の死を人々が悼んでいると突然、大雨と雷、風で天候が荒れた。翌朝、人々が見てみると、「酒のゾウ」と酒を入れていた杯は、山へと姿を変えていたのだという。
それが、現在のパック・タ山だ。

山の独特の形状を女性の乳房のふくらみに見立てて、パック・タ山は「母の胸」と呼ばれることもある。多くの詩人や作家が、この山を作品の題材にしている。
そんなパック・タ山一帯の新たな側面が、エコツーリズムだ。

パック・タ山の数々の伝説から、そのふもとには神社も建てられ、地元の人々に神聖化されている。おかげで手つかずの雄大な自然が残され、その美しい風景は最近急速に旅行先として注目を集め、訪れる人が増えている。人気は、船で湖の上からの景色や原生林の見物のほか、神社への参拝などだという。