ラオカイ省の少数民族宅にホームステイ 体験型観光が人気に

週末を利用して訪れた、ベトナム北西部、ラオカイ省のバットサット区イティ地区(Bát Xát, Y Tý)は、少数民族のモン族やハーニ族などが暮らす集落だ。最近この村で、ホームステイ型の観光に注目が集まっている。私が泊らせてもらったスン・ティ・シーおばあさんの家は、訪れる観光客が途切れないほどの人気だという。

到着すると、私に提供されたのは、バルコニーに近いベッド。`霞みに包まれたイティ地区の絶景を眺めることができる。シーおばあさんの家からは、白い霧の中、キノコのような漆喰塗りの家々が並ぶ幻想的な村の景色が、遥か遠くまで見渡せた。

おばあさんの家は、整然と片づけられていた。料理を作る台所のほか、モン族の人たち特有の薬草(ハーブ)を入れる浴室があるのが特徴的だ。ホームステイに来た客は、まず、モン族の風習に従って、ハーブのお湯で体を洗うところから滞在が始まる。

この一帯では、レストランや飲食店がまだ発展していないので、シーおばあちゃんは部屋を貸し出すだけではなく、観光客向けの飲食サービスも提供している。料理は、地方独特の食べ物で、めずらしいものも多いがどれもおいしい。私たちが訪れた時のメニューは、ゆでたアヒル肉とアヒルの内臓に、苦みのあるハーブのソースをかけたものと、アヒルの首肉や手羽先と若竹をベトナムスタイルのソースであえた炒め物だった。食後は、家の中庭で、おいしいシンサン酒を飲みながら、おばあさんがモン族やハーニ族のとても興味深い習慣や文化などを話してくれた。歌や踊りの交流会もあった。

イティ地区では、ホームステイをはじめ観光客が宿泊できるが場所は少なく、現状では100人程度の観光客にサービスを提供している。料金は、1人1泊5万ドンという手ごろな値段だ。


ホームステイの観光客。バイクで送迎してくれる

シーおばあさんのほか、集落では、ジャン・ティ・ミーさんとスン・ア・ホーさんのホームステイ先も、観光客にはよく知られている。これらの施設は良心的で冬になれば暖房用クッションなどを貸し出してくれるし、無線LANもあるので便利だ。また、ホームステイ客に観光地やガイドの紹介もしてくれる。

イティ地区でのホームステイでは、手厚いもてなしを受け、平和で素朴なひとときを楽しめる。そのため、訪れる観光客もどんどん増えているのだという。だが、シーおばあさんらホームステイ先の家々のオーナーらは、宿泊やサービスの料金を引き上げようとはしない。

「観光客に、イティについて良い印象をもってもらいたいからだ」という、シーおばあさんの言葉が響いた。