フード・ツーリズム推進へ ベトナムを「世界のキッチン」に

一度食べたら、やみつきになるベトナム料理。ニョクマム(ヌックマム=魚醤)や、かんきつ類のカラマンシー、マメ科のタマリンド、唐辛子などで味付けされた辛みと甘味、酸味がほどよくまじりあった複雑な味わいは、多くの人を魅了し続けている。旅行業界では、こんなベトナムの食にこだわった観光客誘致に力を入れている。

写真㊤=マーケティングの世界的権威で経営学者のフィリップ・コトラー氏は、観光客誘致のために、ベトナムを「世界のキッチン」としてブランディングしていくことを示唆した

このほど、ハノイで開催された「ベトナム国際旅行フェア―2018」では、「ベトナム料理の伝統と発展」というテーマでワークショップが開かれ、参加者らはグルメツアーの促進について、活発に意見交換した。

世界食品旅行協会(略称:WFTA)のデータや各種レポートによると、料理をテーマにした旅行に興味のある人は多く、フード・ツーリズムについて業界の8割が、地域経済の発展にも寄与できるパック旅行商品の戦略的コンテンツと認識している。

国内ではフード・ツーリズムに対する意識は高まっているが、他の国々に比べるとまだまだ低い。ベトナム民族人類学協会副会長のボン・チュアン・チン准教授は、2020年、2030年に向けた国の観光発展マスタープランについて、フード・ツーリズムを視野に入れた戦略に練り直すよう指摘。単なるレストランの食べ歩きや、イベントを開催するだけではなく、料理の起源や調理、歴史、作法にも関心をもってもらいたい、と話す。

マーケティングの世界的権威で経営学者のフィリップ・コトラー氏はかつて、海外からの観光客誘致のため、ベトナムを「世界の台所」としてブランディングしていくことを提唱した。

それほどまでに、ベトナムには、名物料理が多い。サクサクのバケットに野菜やオムレツなど、好みの具をはさみこんだサンドイッチ、バンミー。エビや豚肉などをピリ辛のソースとともにライスペーパーに巻いて食べるベトナム風のお好み焼き、バインセオ。焼豚を添えたフォー、そして生春巻…。

国立文化遺産協会副会長のダン・バン・バイ准教授は、持続可能な観光の発展のためにも、ベトナム固有の食遺産を、文化的な議論のテーブルに乗せるべき時期がきた、と話している。