フランス植民地時代の建築守るハノイ郊外クウ村 歴史漂う家並みが人気

ハノイ市フースエン区のバントウ地区クウ村(ラン・クウ=làng Cựu)は、伝統衣装のアオザイなどの衣類縫製で有名な村だ。古くはフランス植民地時代から、村人たちはフランス人やハノイの上流家庭の人々の衣装を縫製し、その儲けでりっぱな家を建てた。村は、今でも、時間が止まったかのように、静かな田舎の美しい景観を残している。

クウ村は、ハノイ市の西約20キロの辺りにある。村に入ると、道の両側に薄い黄色のしっくい壁の家々が並ぶ。ベトナム様式とフランスのスタイルが混じり合った建築が、特徴的な町並みを作り出し、訪問者を魅了する。

案内してくれたクウ村のグエン・クアン・フイ村長によると、民家の外観には西洋の近代的な建築手法が取り入れられているが、寺や神社、路地などの造りは、伝統的なベトナム風だという。村の家々は、多くが60~70年もの歴史があるそうだ。

「村には全部で50軒ほどの古い家があるのですが、そのうち10軒は、100年以上も前に建てられたものです」とフイ村長は説明してくれた。黄色いしっくい壁や石畳に生えた苔が、歴史を感じさせる。

家の内部は、おおまかに3つの空間に分けられている。中央の部屋にあるのはたいがい、先祖を祀ったベトナムの伝統的な祭壇で、その両側が生活スペースというつくりだ。

 

どの家にも木陰を作る木を植えた庭があり、観賞用の魚を飼う池や庭木も手入れされている。

驚くべきなのは、この古い町並みが、行政の指導などで保存されているのではなく、今でも住民たちがここで普通に生活しているということだ。広い敷地に新たに近代的な家を建てることもできたはずだ。だが、村を受け継ぐ若い世代は、歴史ある建築をそのまま維持したいと感じ、村の景観を保存している。水がめで雨水を貯め、生活用水に使うという伝統的な生活を守る世帯も少なくない。

クウ村は最近、観光地としても知名度が上がってきたが、人々の暮らしの息づかいが感じられるからこそ、観光客らもこの町並みに魅了されるのだろう。