ベトナムのツーリズム 国際統合過程の強みを発揮し、チャンスをつかむ

 地理的にも政治・経済的にも様々なメリットを有するベトナムにはツーリズム発展に多くの利点がある。東南アジアの中心に位置するベトナムは大陸から太平洋に突き出し、海路、河川、鉄道、道路、空路すべてにおいて国際交流のハブとなっている。これは国際ツーリズムの拡大と発展には重要な条件である。

写真㊤=ハロン湾

ベトナム・ツーリズムの多大なるポテンシャル
ハロン湾、古都フエ、ホイアンの古い町並み、ミーソン聖域、フォンニャ・ケバン国立公園などのようなUNESCO世界文化遺産として登録された数々の景勝地以外にも、ベトナム国内には南部・中部・北部それぞれにエコツーリズムの拠点が多数存在し、外国人観光客を惹きつけている。

 ベトナムは自然観光資源、人文観光資源のいずれにおいても豊富で多様である。海、島、平野、山、高原といった地形的な多様性がベトナムの景観や生態系を豊かにし、特に海洋エコツーリズム、湖沼エコツーリズム、森林・洞窟エコツーリズムなどの発展に高い価値を付加している。

 それらに加え、南北に長い国土に散らばる54もの少数民族の歴史や伝統文化、ベトナムの生活様式・宗教・民間の文化・祭礼・食文化にあらわれる民族色の濃い水稲文化、特に文化遺産の奥深さは人文的観光資源として圧倒的な強みである。具体的に言うと、ベトナムには4万以上の遺跡・景勝があり、そのうちの3千以上が国家遺産となっている。あまたの有形遺産のうち、UNESCOの世界遺産としてハロン湾、ホイアンの古い町並み、チャンアンの景観関連遺産、タンロン皇城を含む8つが、生物圏保護区として紅河デルタ、カットバー、西ゲアン、ドンナイ、ク・ラオ・チャム島、カンゾーのマングローブ林、カマウ岬、キエンザンの海などの8つが、無形文化遺産としてはフエの宮廷雅楽、ベトナム中部高原におけるゴングの文化的空間、民謡クアンホ、カーチュー、ゾン祭り、伝統歌謡ハット・ソアン、フン王信仰が登録されている。

 ドイモイ刷新政策が布かれ30年を経て、ベトナムのツーリズムは平均成長率9%から10%と大きく成長した。特に2017年には25%という大台に達し、2018年には海外から観光客1500万人を迎えた。ベトナム・ツーリズムのブランドとイメージはますますその存在感を強めている。ブルーム・コンサルティングによる国際ツーリズム・商業ブランド格付けでは、ベトナムは世界ランキングでは10ランクアップの47位、アジアにおいては2ランクアップの15位である。

 ハロン湾、フォンニャ・ケバン国立公園、ホイアンの古い町並み、ダナンのバナヒルズの黄金の橋など、ベトナムの多くの地がツーリズム関連の有名な雑誌において好ましいデスティネーションとして選ばれている。またベトナムには最高のサービスを提供し国内外のゲストを惹きつけるトゥアン・チャウ(クアンニン省)、FLCサムソン(タインホア省)、ニャチャン(カンホア省)、ムイネー・ファンティエット(ビントゥアン省)、ダラット(ラムドン省)、フーコック(キエンザン省)ブンタウ(バリア・ブンタウ省)のような世界的な高級観光地・リゾート・ホテルがある。2018年、ベトナムはワールド・トラベル・アワードの「アジア太平洋最高のデスティネーション」賞を受賞し、ダナンの2つのリゾート施設がホテルサービス部門で世界最高評価の賞であるワールド・ラグジュアリー・ホテル・アワードの「世界で最もラグジュアリーなファミリー向けマリンリゾート」と「世界で最もロマンチックなホテル」を獲得した。2018年にはまた、ベトナムがワールド・ゴルフ・アワードから「アジアで最高のゴルフ・デスティネーション」を2年連続で受賞している。

国際化の推進
 観光分野における国内の強化と並行して、ベトナムはアジア地域および国際的な活動に積極的に参加し、統合を進めている。1981年に国連世界観光機関(UNWTO)の正式メンバーとなったのを機にそのプロセスは進み、成果をあげている。1995年の太平洋アジア観光協会(PATA)を手始めに、これまでに様々な観光組織に加盟し、1995年には東南アジア諸国連合(ASEAN)、そして1998年にアジア太平洋経済協力(APEC)に加盟し、アジア地域内外の観光分野とともに歩んできた。これらの相互協力体制はすべて積極的に展開し、ベトナムのツーリズムに多大な利益をもたらし、協力の結びつきを支援し、投資を誘致し、ベトナム・ツーリズムのイメージを世界にPRしてきた。ベトナムのツーリズムはここでもメンバーとしての責任と役割を十分に果たし、各組織、メンバー国から高く評価されている。

 特に2019年の年明け、1月14日から18日にベトナムはASEAN観光フォーラム(AFT)を開催する。ベトナムにおいてASEAN観光フォーラムが開催されるのはこれが2回目である。2009年にベトナムは初めてASEAN観光フォーラムを開催した。10年後の今年、ベトナムは再びアジア域内ひいてはグローバルでも政治・経済・社会的に大きな意義を持つこのイベントを主催する。

 フォーラムではASEAN観光大臣会合、パートナー国中国・日本・韓国・インドとのASEANプラス4観光大臣会合、ASEAN各国政府観光庁トップ会合、ASEANインド・ASEANロシアのワーキンググループ会合、観光見本市(TRAVEX)、ASEAN観光会議、開会式、閉会式、その他の活動が行われる。

 2019年のフォーラムはベトナムが引き続き域内ツーリズム協力における役割と存在感を強め、海外の人々にベトナムという国・人・ツーリズムのイメージを紹介するチャンスとなる。ASEAN観光フォーラムの開催により海外からの観光客はさらに増し、ツーリズム活動はより活性化し、主催国ベトナムに対するパートナーや投資家の関心と理解が高まるなど、確実に効果をもたらすことだろう。

 観光分野を含め、全体的な統合の過程においてチャンスやメリットがあるのと同様に、世界やアジア地域に共通する影響をはじめ、ツーリズムトレンドの変化や国に内在する弱点から生まれる隘路など多くの困難や試練に直面もせざるを得ない。しかしながら、協力と国際化はベトナムのツーリズムを発展させるための優先事項であり、政府、関係各省庁、観光関係ではない分野からも常に関心が寄せられている。統合はベトナムの文化価値・国や人々のイメージを世界の人々にPRし発信するためだけでなく、アジア域内そして世界のツーリズム共通の成長においてベトナムの存在感・役割・責任を確固なものとするための重要な一策であると考えている。今の連帯強化と統合のトレンドはベトナムの観光分野のみならず全体的な経済社会発展に貢献するためのよりよい環境を作る大きなチャンスである。

 この先、ベトナム既存のポテンシャル、おもてなしの心に増して、国内を強化し、支持を得、国際協力の推進における政府・関係各機関の努力が加わることで、ベトナム・ツーリズムはますます多くの成功をおさめ、アジア域内・世界の人々に刮目されるだろう。ベトナムは海外観光客の魅力的なデスティネーションとして、日本を含む海外投資家から信頼される選択肢であり続ける。