伸び悩むベトナムのクルーズツーリズム、インフラ整備が急務

3260キロメートルを超える海岸線と、100万平方キロメートル以上の排他的経済水域(EEZ)を持つベトナムは、クルーズツーリズム(船の旅)の市場で大きな可能性を秘めている。しかし、これらを実現するには、一貫した戦略と政策、そして適切なインフラの整備が必要だ。

ベトナムは現在、毎年約500のクルーズ船と約30万人の外国人旅行客を受入れており、この数は国を訪れる外国人観光客の2、3%に相当する。寄港したクルーズ船の数ではアジア諸国の中で4位、クルーズツーリズムの市場規模はASEANで1位に位置する。

ベトナム観光総局(VNAT)旅行部部長のグエン・クイ・フオン氏は、Vietnam Economic Newsの取材に対し、「ベトナムは、地域の国々に比べて、クルーズツーリズムの開発に高い可能性と優位性を持っている。しかしながら、不十分な港湾施設や管理体制が最大の課題になっている」と話す。

ベトナムには、クルーズツーリズムのために計画された6つの港がある。2014年の首相決定では、北部と中部に、総トン数10万~22万5282の船舶が寄港できる港の建設が言及された。しかし、計画のうち、実際に使用されているのはクアンニン省のハロン国際港のみで、他の港はまだ建設中だ。

フオン氏は、「港の建設とともに、停泊地や入国管理手続き、旅客用ラウンジ、関連する公共サービスの整備は、クルーズツーリズムの発展にとても重要だ」との認識を示した。

また、運輸省の担当者は、「大型クルーズ船向けの港がないことも大きな問題。貨物港の運営会社は、クルーズ船が貨物港を利用することを歓迎していない。なぜなら彼らは、クルーズ船が貨物の積み下ろしに影響を及ぼすほか、海外でのケースに比べて収益が非常に低いと考えているためだ。実際に海外の旅行・クルーズ代理店は通常、2、3カ月という短い期間しか停泊地をリースしない」と明かす。

グローバル・ポーツ・ホールディング社(トルコ)のエムレ・セインCEOは、「ベトナムは、クルーズツーリズムの発展に向けて、適切な戦略を立てる必要がある」とした上で、「沿岸部の都市は、一貫した高品質なサービスを提供する競争力のある港湾の建設が可能であり、また今後2年間で、クルーズ会社にベトナムの港を寄港地に選んでもらうよう適切な広報戦略を実施することもできる」と指摘した。

統計では、アジアを訪れるクルーズ客の数は、平均で年間23%増加しているが、ベトナムの伸びは緩やかなままだ。セイン氏によると、伸び悩む唯一の原因は、ベトナムに必要な港湾施設がないためだという。