ベトナムシルクの魅力、世界に発信 観光と産業のPR果たすホイアンシルク村

かつて重要な国際貿易港であったベトナム中部の都市、ホイアン(クアンナム省)は、ベトナムの絹生産の中心地だ。ここにある「ホイアンシルク村」は 観光施設と産業PR拠点という2つの顔をもち、ベトナムシルクを各国のファッション界、さらには海外市場へと橋渡しする重要な役目を担っている。

◇海の“シルクロード”の拠点、ホイアン
400年ほど前のホイアンは、当時ダンチョンと呼ばれていた地方の、重要な交易港だった。ホイアンからは、いわゆる“海のシルクロード”を経由して、ベトナムシルクをはじめ、さまざまなベトナムの特産品が日本や中国、ヨーロッパ諸国へと輸出されていた。

一帯に生糸を生産するカイコやそのエサとなる桑の木がふんだんにあったことから、ホイアンは、グエン王朝の時代に絹生産がたいへん盛んになった。1624年にホイアンを訪れたフランス人のアレクサンドル・デ・ローズ牧師は、「ここでは絹糸があまりに豊かにあるため、現地の人々は絹糸を使って漁業用の網を作っている」などと記した。

この時代には毎年のように、中国や日本、ポルトガル、オランダ、イタリアなどからの船が、絹生糸や布を買い求めるためにホイアンに寄港。古い書物などによると、絹市場の活性化とともに、ニャーサやハナム、バンフック、ハドン、ズイスエン、マチャウなどといった周辺の地域からも特色ある絹製品がホイアンに集められるようになり、海外へと輸出されていった。歴史書には、より多くの絹を買い求め、迅速に貿易ができるようにと、多くの日本人貿易商がホイアンの街に住み着いた記録なども残っている。

◇世界市場に絹の魅力発信 経済的な側面支援も
今日のホイアンはむしろ、国内外から多くの人々が訪れる観光地として有名になっている。その観光地としての側面を生かして、ベトナムシルクの魅力を発信し、輸入促進へとつなげているのが、旧市街にある「ホイアンシルク村」だ。

ここでは、カイコの飼育や桑の生産から、マチャウ、バンフック、バオロック、チャンパなど絹名産地とされる土地の特色ある絹製品や機織り技術まで、絹にまつわるさまざまな伝統を伝える。それぞれの絹産地は特徴的で、独特の文様や色の組み合わせなどがあり、ベトナムの豊かな芸術文化の一端を担っている。

クアンナム・シルク社のレ・タイ・ブー社長は、絹織物の生産を実際に見て学び、幅広い絹製品を購入することができるホイアンシルク村を、観光や学習の拠点として高く評価すると同時に、「絹産業の支援拠点や国際的な広報施設としても重要視している」と話す。

ベトナム製の絹製品は近年、さまざまな国際的な展示会やイベントなどで紹介され、その評価や地位を固めているが、ブー社長によると、その影響で近年、シルク村に観光客だけではなく米国やオーストラリア、フランスからのバイヤーも、多く訪れるようになっているというのだ。

絹素材や絹製品を作り続ける各地の伝統工芸村も、その知名度を高め、世界から新たな技術や技法を学ぶ窓口として、各地の国際展示会とともに、シルク村にも期待を寄せる。ブー社長は、「ホイアンシルク村は、ベトナムの絹製品の魅力を海外の観光客や絹産業にかかわる人々に伝えることに成功している好例だ」と話す。