観光業支援として付加価値税率引き下げなど政府に提案 文化スポーツ観光省

新型コロナウイルスの世界的感染拡大のために苦境にたつベトナムの観光業界が、かつての活況を取り戻す契機にしようと、ベトナムの文化スポーツ観光省(MCST)はこのほど、グエン・スアン・フック首相に対し、「観光業救済のための緊急課題リスト」を提案した。具体的には観光業界を支援するため、付加価値税率(VAT)の引き下げや電気料金支払いの減額措置などを検討している。

新型コロナの影響で、ベトナムの観光業は前例のない危機に直面している。文化スポーツ観光省の最新の報告によると、観光業のうち95%の企業が操業を停止。このうち10%は廃業を申請しているという。

宿泊業では、ハノイやホーチミン市のホテルの客室稼働率が10%にまで落ち込んだ。感染者の発生事例が多数報告されたダナン市やクアンナム省、クアンガイ省などでは、訪れる観光客がほぼゼロとなった。リゾート型観光地であるカインホア省やキエンザン省、ビンディン省、クアンニン省などでも、客室稼働率が3~5%で推移しているのが現状だ。

この影響で、多くの施設では、一部の施設保全担当者らを除き、大量の従業員が解雇されるなど、業界への影響は計り知れない。

そこで、文化スポーツ観光局は、観光業へのテコ入れ策として、観光施設や宿泊施設などの電気料金の引き下げ▽現在は10%の付加価値税を、2021年年末までの期間限定で5%に引き下げる―などの具体策を盛り込んだ課題リストを提案した。

このなかで、新型コロナの影響を受けた労働者らに対しては、納付義務のある退職金保険料や生命保険料の徴収一時停止の措置を延長し、滞納金の徴収も免除することを提案した。納付義務のある労働組合費も徴収時期を先送りすると同時に、労働者の収入保障を継続するよう、政府に働きかける。収益が出ていない観光業の事業経営者に対する銀行融資の返済時期についても、期限の先送りを認めるよう政府に求めた。

過去10年間ほどで、ベトナムは世界的な観光地として注目されるようになった。観光業界は、平均の年間成長率が22%増で推移するなど、ベトナム経済をけん引してきたといっても過言ではない。

ベトナム政府観光局のグエン・チュン・カイン局長は、ベトナムの観光について、「観光地の行政当局やさまざまなサービス業を中心に、業界全体が多くの権威ある賞を受賞し、世界的な地位を堅固なものにしてきた」と語る。

その観光業を、コロナ禍にあって下支えするために、観光局や文化スポーツ観光局などは、今回の提案に加え、緊急措置として、国内観光刺激策の第2弾を実施する方針を固め、事前準備や調査の展開を始めた。今年の年末までに、安心安全で価格も魅力的、品質も優れた観光商品を提案することを目指している。