晩秋の中央高原、ダラット市 黄金の陽ざしと静寂が魅了

ベトナム南部の中部高原にあるダラット市(ラムドン省)は、フランスの植民地時代から夏の避暑地として有名だ。だが、季節ごとの気候にはっきりとした特徴があり、それも魅力の一つとなっている。10月中旬から翌年3月ごろまで寒い日々が続くが、晩秋の今ごろの時期は「黄金の陽ざしの季節」という美しい名で呼ばれている。

ダラットの冬は乾季で、ヨーロッパの秋の気候に非常に似ている。太陽が黄金色に輝き、空は青く澄み渡っていることが多い。だが、高度が高く、風も強いので、見た目の印象よりも寒く感じられ、ダラットでは人々がコートを着て出かける姿がよく見られる。

この時期、人々は早朝、寒さで目を覚ます。外に出ると息が白くなる。ダラットの季節が晩秋を迎え、もうすぐ冬へと移りかわるという合図だ。緑だった木々や通り全体が黄色く染まっていく。

寒さがピークとなるのは新年を迎えるころだが、感慨深いのは、季節がうつろいゆくのを実感する10月末から11月上旬ごろの晩秋の時期だ。ベトナム語でダーキュイ(dã quỳ)とよぶ野生のニトベギクがあちこちに咲いて、道ばたや畑の風景を黄色で彩り、ダラットをこれまで以上に魅力的にする。

ダラットは景色や時間や空気がゆっくりと流れる印象だ。人々も穏やかで、急かされるものが何もない。目立つものも何もなく、あるのは湖と花や草、松の生える丘、日差しと寒さと静寂だ。

サイゴン(ホーチミン市)が、活発で熱意のある女性だとすると、ダラット市は、優しく穏やかな少女のようだ。あまりに静かで、穏やかで純粋なので、訪れた者も、ただ見とれるばかりで、静かなその空間を壊したくないという思いになる。

多くの旅行者がダラットという街と恋に落ちるのは、このような瞬間だ。花の都と呼ばれるダラットだが、華やかな花の街であるだけではなく、ロマンティックなラブストーリーの街でもあるのだ。