海外向け観光客誘致キャンペーン「ホワイ・ノット・ベトナム?」展開 観光総局、CNNと提携し映像作成

ベトナムは国を挙げて、海外観光客向けの多角的な観光PR活動を開始した。手始めに、米国CNNテレビと提携し、「ホワイ・ノット・ベトナム?(Why not Vietnam?=旅行先はベトナムにしない?)」と題したPR動画を発信した。新型コロナウイルスの感染が落ち着いたときに、外国人観光客らに、旅行先としてベトナムを連想してもらおうというねらいで、ベトナム観光総局、観光諮問会議などが展開している。

CNNが映像を制作したPR動画=写真㊦=では、30秒の間に観光名所や自然美、食、文化など、ベトナムのさまざまな顔がちりばめられている。このほかにも、ソーシャルメディアでのプレゼント企画、各種の広告のほか、新型コロナウイルス対策に焦点を当てた安全への取り組みについての記事形式での発信などを並行して行い、多角的な観光プロモーション策を展開していく方針だ。

観光総局の報告によると、今年の観光関連のさまざまな指数は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響を受けて、昨年と比べて軒並み悪化したという。1~9月のベトナムの国内観光客数は前年度の約4割減の3750万人。9カ月間にベトナムに入国した外国人の数は、前年同期比67.4%減の369万人にとどまった。文化スポーツ観光省によると、9カ月間の観光分野の収益も233兆ドンで、前年同期より271兆ドンも減少した。

観光業界は、回復に向けた第一歩としてまずは、国内向けの観光促進策に乗り出していた。「ベトナム人よ、ベトナムを旅しよう」といったキャンペーンの展開で、外出自粛が明けた5~7月には、観光客が前年同期の20%増しになった。グエン・チュン・カイン観光総局長はこのほど、国内の観光客向けに、「体験しよう、ベトナム」と題した新たなキャンペーンを、近く開始することを、ホーチミン市で明らかにした。

業界の回復加速を後押しするためにも、観光総局では、年末までの期間、さまざまな刺激策を投入する考えだ。観光総局のグエン・レ・フック副局長によると、観光促進策は全国各地で歓迎されており、観光のV字回復のために、各地の地域当局や企業なども積極的に協力してくれているという。

今回新たに作成された海外向けの観光促進映像「ホワイ・ノット・ベトナム?」は、「新型コロナが落ち着いて、海外旅行ができるようになったら、行き先はベトナムにしない?」という誘いを込め、ベトナム各地を紹介した。映像はCNNアジアで10月15日から放送。11月末まで6週間にわたって繰り返し流された後、米国のニュース専門放送局CNBCにも登場する予定だ。また、ベトナム観光総局公式サイト(www.vietnam.travel)のほか、さまざまなメディアでも見ることができるようになっており、2021年に向けて、「安心で安全でありながら、わくわくできる旅先」というベトナムのイメージ発信を続ける。

クリスマスや新年の休暇に先立つ10~11月という時期について、観光総局は、航空便の海外路線が徐々に運航を再開しており、PR展開が効果的になると分析。「今年のこの時期は、米国の大統領選挙戦の最中で、多くの人のテレビやメディアの視聴が期待されていたこともある」とフック副局長は説明した。

この映像に続き、今後数カ月のうちに新たなPR活動の展開も計画されている。これには、ソーシャルメディアでのさまざまなプレゼント企画や、広告発信のほか、テレビ番組や記事などでベトナムにおける新型コロナ対策と効果的な感染制御についても伝達していくというで、観光総局はこれに並行して、さまざまなデジタルマーケティング手法で、アフターコロナのベトナム観光をPRする。

ベトナム観光諮問会議のホアン・ニャン・チン事務局長は、「今後4カ月間で展開するキャンペーンを通じて、ベトナムへの海外からの観光客誘致を期待している」と話す。11月に展開している最初のキャンペーンでは、2021年に利用できるベトナム航空の国際便往復チケットと、ベトナム北部高原、サパで少数民族村などを訪ねる、観光客に人気の4日間のツアーをセットにしてプレゼントする。希望者は、フェースブックやインスタグラムなどで観光総局(@vietnamtourismboard)をフォローすることなどで応募できる。

観光総局は、新型コロナウイルスの感染が拡大するなかで、ベトナムの人々がどのように協力し、ウイルス感染に立ち向かったかについても、海外に向けて発信したいと話す。「『ホワイ・ノット・ベトナム?』キャンペーンでは、新型コロナが落ち着いたら、ストレスから逃れ、ほっとしたいと考えている観光客に向け、最適な観光体験を提案したい。同時に、ベトナムが安心安全な旅先であるということも強調したいのだ」と、観光総局のマーケティング局、ディン・ゴック・ズック局長は語る。

ベトナムが新型コロナの制御に成功したことや、社会的距離を保ちながらの観光や休暇の楽しみが提供できることなどが、今後、ベトナムを旅行先として選択する際の観光客の最大の理由になるだろうとズック・マーケティング局長は分析している。「ベトナムは、まだ広くは知られていないがゆえに、静かに過ごして精神的な安らぎを得られ、おいしい食べ物と古くからの伝統文化などを楽しむことができる、アフターコロナのニーズに応えられる旅先が、豊富にあるはずだ」とズック局長は新たな観光資源の発掘にも余念がない。