メコンデルタの観光回復を 安全対策、宿泊料金など割引

ベトナム観光協会(VITA)によると、メコンデルタ地域は2019年、4700万人の観光客(うち1350万人が宿泊客)が訪れ、観光収入は前年比約260億円増の1330億円を記録した。しかし、今年は新型コロナウイルスの影響で旅行者が劇減。地域では、観光客を呼び戻そうと、関連業者と協力して割引サービスを展開するなど、さまざまな対策を打ち出している。

メコンデルタ最大の都市、カントーの文化・スポーツ・観光局のデータによると、同市の今年1~10月の観光客は前年比53%減の350万人と低迷。年間目標の38%にとどまった。観光収入も前年同期比43.4%ダウンで目標額の40%にしか達しなかった。

キエンザン省の観光客も、前年同期比39%減の460万人に。カマウ省も同25%減の89万1000人で、1~10月の観光収入は27.7%減に。約1700件のツアーがキャンセルとなり、4400万円相当の損失が見込まれている。

こうしたなか、カントー市はメコンデルタへの観光需要を刺激するプログラムの一つとして、旅行代理店や宿泊、運輸、健康、ケータリング、エンターテインメント関連の事業者とともに、観光プロモーションをスタートした。同市の文化・スポーツ・観光局のグエン・カーン局長は、「ようやく観光復活に向けて歩み始めた。今年の目標の60%を達成したい」と話す。同局は、関連業者と協力しながら、ホテルやレストラン、アトラクション、ショッピングセンターなどの10─50%の値引きを展開。プログラムは、「2021カントー・スプリング・フラワー・ストリート」に合わせて、来年1月いっぱいの継続が期待されている。

一方、アンザン省も観光客数と観光収入が昨年の90%を維持できるよう、学校や生徒、役所の職員にターゲットを絞った活動を展開している。同省文化・スポーツ・観光局によると、観光は微増しており、さらに需要を刺激するプログラムを準備中だという。同局のダオ・シ・チュアン副局長は「クリスマスや年末の買い物、新年といった商機に向けて、刺激的なプログラムを準備している。また、料金の割引を打ち出すために、旅行関連業者と協力している」と意気込む。

ドンタップ省文化・スポーツ・観光局のゴ・クオン・チュエン副局長は、サ・デック・フラワー・ビレッジやライブン・タンジェリン・ガーデン、トラム・チム国立公園と言った名所で「工芸品や民芸品の販促を展開している」と話す。新暦、旧暦の正月シーズンをひかえ、メコンデルタ地域とホーチミン間の旅行のPRにも力を入れている。

メコンデルタ地域の各省は、安心安全な旅行に向けて、新型コロナウイルスの予防に向けて、関連当局との連係を進め、ビジネス客や観光客の宿泊先となる施設の安全基準を打ち出している。メコンデルタ旅行協会のトラン・フー・ヒエップ副会長は、「観光刺激策は、ディスカウントだけでなく、良質の物とサービスが伴わなければならない。安全基準は宿泊施設だけでなく、輸送やケータリングサービスなど、関連するすべての分野に適用される必要がある」と強調した。