国内旅行が業界回復の原動力に=「コロナ前」にはなお時間

ベトナムは2020年、政治局の目標として、外国人訪問者を2000万人以上にすることを掲げていた。同年1月には200万人の外国人が訪れるなど、幸先の良いスタートを切ったが、その後の新型コロナウイルスの影響が、世界の観光市場だけでなくベトナムにも甚大な損失をもたらした。また、国内の観光市場も、2度にわたる感染拡大により深刻な影響を受けた。

ベトナム観光総局(VNAT)によると、2020年の外国人訪問者数は前年比79.5%減の370万人、国内旅行者は前年比34.1%減の5600万人だった。総観光収入は約190億ドル(約2兆円)で、58.7%減少した。

政府は、低迷する観光業を支援するため、電気料金や土地税などの優遇措置を含む様々な救済策を打ち出した。また、2020年5月と9月に実施された国内観光振興策の導入でも、企業と緊密に連携を図った。

VNATによると、この国内観光振興策により、とりわけ国内の主要観光地への旅行が大幅に増加した。2020年6月と7月には、グーグルでの国内観光地に関する検索数が、2019年の同時期に比べて66%増加した。宿泊施設の稼働率も増えて30〜50%に達し、週末には80〜90%になることもあった。航空会社は新路線を開設し、拡大する観光ニーズに対応した。

◇国際的な評価
こうして国内旅行市場は、業界回復の原動力になった。VNATのハ・ヴァン・シエウ副局長は、「2020年、ベトナムの観光業は、世界有数の遺産・文化の地、アジア指折りの食文化を有する地、そしてアジア最高のゴルフ拠点に選ばれるなど貴重な評価を得た」と強調した。また、「ベトナムの文化や遺産、食文化を国連教育科学文化機関(UNESCO)や国連世界観光機関(UNWTO)、ASEANなどの多国間フォーラムの場で紹介した結果、多くのベトナムの旅行業者が、国際的に名誉のある賞を受賞した」と続けた。

一方で、UNWTOの予測によると、世界の観光業が回復し始めるのは2021年後半になってからで、新型コロナの状況にもよるが、2019年の水準に戻るには2年半から4年かかるという。また、VNATは、ベトナムの国際観光がパンデミック前の状況に戻るにも、時間が必要だと予測している。こうした中、観光業界が掲げる「つながり、行動、発展」のモットーは、困難を克服し、チャンスを活用し、第13回党大会の決議と2021〜25年までの社会・経済発展計画を実践し、観光業が経済分野の先頭に立つための決意を表している。

2021年、ベトナムの観光業界は、国内観光振興策を継続して実施し、状況が落ち着けば海外からの訪問者を受け入れる準備をするだけでなく、国の観光管理の有効性と効率性を高め、事業環境を改善し、競争力を強化し、スマートツーリズムの発展に向けて政府の支援策やデジタル・トランスフォーメーションを効果的に実施していく。