国際観光の復興に向け、デジタルメディア活用 絶景、文化とコロナ克服の実績強調

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が収束し、国境の自由往来が再開する瞬間に向けて、ベトナム政府観光総局(VNAT)が、国際観光の回復に向けてデジタル上での活動を活発化している。今後も米国IT大手のGoogleや、小売り大手のビンパール社の支援を受け、映像発信などの観光振興活動を強化するという。

◇デジタルマーケティングの拡充 
ベトナム観光総局がデジタル観光振興として展開するPR動画は、「ディスカバー・ベトナム(ベトナム再発見)」がテーマ。映像投稿サイト、ユーチューブの観光総局のチャンネル(https://www.youtube.com/vietnamtourismmedia)で、公開されている。ベトナムの手付かずの雄大な自然美だけでなく、建築や料理、舞台芸術、伝統の祭事、伝統工芸村の様子など広い分野にわたり、ベトナム独特の文化と遺産の数々を紹介するのがねらいだ。ベトナム北東部の棚田、圧倒されるような風景と豊かな生態系をもつ世界最大級のソンドン洞窟(中部クアンビン省)、メコンデルタ流域などが、これまでに取り上げられている。

4月6日には、ベトナムの息をのむ美しさを誇る海岸線や島々に焦点をあてた新映像、「海がいざなう―愛への旅」=写真㊦=を、投稿した。以前公開したPR映像、「ベトナム―国と人々」は、投稿からわずか1カ月間で、140万回も再生された。

ユーチューブでの映像公開に加え、世界各地の美術作品や歴史的資料などをオンラインで鑑賞できるグーグル社のプロジェクト、Google Arts & Culture(グーグルアーツアンドカルチャー)でも、「ベトナムの神秘」と題したバーチャル展示会の公開を始めている。

観光総局が、グーグル社と事業提携を結び、デジタル上での観光振興策を始めたのは2年前だ。新型コロナウイルスのまん延が世界的の観光を委縮させる前のことで、これまでに1369枚の優れた写真や、双方向で楽しめる魅力的な機能を公開してきた。

◇絶好のタイミング
新型コロナの終息後、国境が開放さればすぐにでも、海外からの観光客を歓迎したいというのが、ベトナムの考えだ。ベトナム国家大学ハノイ人文社会科学大で観光学部長を務めるファム・ホン・ロン准教授は、「その準備として、ベトナムは、メディアを活用した国内外での観光振興に、今のうちにしっかりと投資をしておくべきだ」と提唱する。

ベトナムの文化・スポーツ・観光省はこのほど、米ASEANビジネス協議会とオンライン会議を実施。この場で、同省のグエン・ヴァン・フン副大臣は、ベトナムがグーグルやフェイスブックと今後も協力していく方針を確認した。「引き続きベトナムを、新型コロナの感染制御に成功してきた美しく、安全な旅先だと宣伝していく」と述べた。 さらに、同協議会のメンバー各国間で観光の傾向分析などとともに、各国で効果があったコロナ対策や保健関連情報なども共有していくことを提案した。

世界各国におけるベトナム大使館や代表事務所なども、ベトナム観光の安全性を強くPRしている。例えば、インドのベトナム大使館ではこのほど、ニューデリーでベトナムでの観光関連企業を対象に展示会を実施した。特に、インドのカップルの間で人気が高まっているベトナムでのウェディングプランの提案に重点を置くという。

経済専門家らは、新型コロナウイルスの世界的感染の収束が見えないものの、今こそ、ベトナム観光の魅力を世界に向けて発信し、海外からの旅行客の到来に備えた準備を行うべきだと強調する。加えて、ベトナム観光諮問委員会などは、国内の旅行客に対する観光活性化の働きかけも必要だと指摘する。

ベトナム観光局のグエン・チュン・カイン局長は、「観光産業は、国内外の市場での観光促進計画を立てている。できるだけ早く海外からの観光客を迎えられるよう、今はしっかり準備したい」と意気込んでいる。