このホテル、安全? コロナ感染対策施設がわかる観光客向けアプリに期待

ベトナムの文化スポーツ観光省と観光総局、その傘下の観光情報技術センターが昨年始動させた感染対策実施施設などの情報発信アプリ「Du lịch Việt Nam an toàn(安全なベトナム旅)」が、少しずつ効果を見せ始めているという。新型コロナウイルスの世界的感染拡大で大打撃を受けたベトナムの観光業界だが、一部で旅行者の受け入れ再開の動きもある。アプリを通じて、基準を満たした感染抑制措置を実施する施設などを紹介することで、業界の活性化と支援に期待が高まっている。

観光情報技術センターは先日、このアプリを通じて、遠く離れたドイツの観光客から連絡を受けた。内容は、「5月に行ったベトナム旅行で、わずか2.7キロのタクシー移動に20万ドンも請求された」という不満だった。センターは寄せられた情報をすぐさまハノイ交通局の検査チームに伝達し、チームが精査。調査の結果、該当するタクシー運転手は、外国人観光客から代金を不正請求したとして、罰金を科せられ、ドイツ人観光客に料金が返還された。この出来事は、アプリの高い効果を示す一例だ。

昨年、実働を始めたこのアプリは、観光客が、行きたい場所がどのくらい安全かの判断する手助けとなることがねらいだ。レストランやホテル、長期滞在型アパート、娯楽施設、タクシーなどの移動手段、病院、薬局などのうち、実施している安全対策などの情報を認可機関に提出済みの施設について、デジタル上の地図に、場所や詳細を表示する。また観光客は、特定の地域内での新型コロナの発生の状況や、回復症例の数などの情報も得ることができる。アプリは、双方向性が一つの特徴で、利用者側は、訪れた場所で安全基準が満たされていたかどうかなど情報をフィードバックしたり、受けたサービスの品質についてコメントしたりもできる。

観光総局のハー・バン・シエウ副局長は、「国の管理効率を改善し、観光分野の安心安全なビジネス環境を維持し、訪れる観光客の健康を守るためにも、観光サービスにおけるデジタル技術の活用を促進する必要がある」と強調する。

文化スポーツ観光省は、各地方自治体などを通じ、地元の宿泊施設などにアプリへの登録を促しており、自治体にはその後の対応や施設の監督などを求めている。現在では、観光客が宿泊予約をする前に、施設の安全性をアプリ上で確かめられるように、宿泊施設にQR コードを取得させている。

全国の3万カ所の宿泊施設のうち、1万カ所がすでにアプリに登録しており、自社施設での新型コロナ感染予防策が正しく実施されているかなどの自己評価も登録されているという。

このアプリを活用しての観光施設などによる安全評価は、地域差はあるものの、かなり高まっている。カインホア省では323の観光客向け施設から、9360件の安全対策実施の申請があったといい、ダナン市でも、376の宿泊施設による7100件以上の申請が寄せられている。

ベトナムではすでに、クアンニン省やダナン市など、観光が再開された場所もあるが、宿泊施設も、旅行客が訪れる観光名所なども、厳しいコロナ感染抑制措置を実施することが義務付けられている。

ベトナムの観光産業は、新型コロナの感染拡大の影響により、多くの困難に直面し、観光客の激減などの余波を受けて倒産した旅行代理店や観光関連施設も少なくない。業界は、省の管理機関と地方自治体が今後、感染対策を実施している基準を満たした「安全な旅先」について、積極的な情報発信を求めているほか、政府による新たな業界支援策の実施を切望しているという。