特定観光地でワクチンパスポート試験運用へ ハロン湾で有名なクアンニン省など

ベトナム政治局はこのほど、新型コロナワクチンの接種者に付与される証明書「ワクチンパスポート」を取得した外国人観光客らが、南部のリゾート地、キエンザン省フーコック島など、感染が制御されている観光地を訪れることができるよう、関係機関に対し、ワクチンパスポートの試験運用を命じた。政治局の支持を受けてファム・ミン・チン首相が、保健省に対し、関連組織と連携して運用の準備に当たるよう指示した。

ベトナム観光総局旅行局のグエン・キー・フオン局長は、「人口が比較的少なく、本土との距離があるフーコック島は、外国人観光客の受け入れを始めるのに適した場所だ」と話す。だが、この施策をフーコック島で実施し、成功させるためには、訪れた外国人観光客と島の住人合わせて18万人のうちの90%が新型コロナワクチンを接種している必要があるというのが、専門家らの考えだ。

島への訪問を希望する外国人観光客はワクチン接種の証明書、もしくはワクチンパスポートを取得したうえで、入国時のPCR検査で陰性である必要がある。また、ベトナム本土とフーコック島の往来の際にも、一定の隔離措置の実施が必要だと指摘された。

キエンザン省の関係者らは、プロジェクトの開始に当たって、政府に対し、フーコック島の全住民のワクチン接種を要望。キエンザン省人民委員会のラム・ミン・タイン委員長は、最初の外国人観光客の受け入れは、9月か10月の初旬ごろになるだろうとの見通しを示した。すでに、島の住人ら1500人が5月2~4日に行われた第1次接種で新型コロナクチンを受けたという。

◇右肩下がりの観光業
文化スポーツ観光省の報告によれば、新型コロナウイルスの影響により外国人観光客は激減し、昨年ベトナムを訪れた外国人は370万人で、2019年と比べて79.5%減と大きく落ち込んだ。国内観光客も前年度比34.1%減の5600万人だった。観光業全体での収益は、前年度実績の約58%にとどまり、金額にして312兆ドンだった。観光業で働いていたベトナム人のうち、失業したり、就労日数を減らされたりしたのは、全体の40~60%にのぼるという。

ベトナムは、新型コロナウイルスの世界的感染の拡大を受けて、昨年3月、すべての航空機の国際便往来を停止し、入国は厳しい検疫要件を満たしたうえで、海外在住ベトナム人の帰国者のほか、政府などが認めた外国人専門家や企業関係者、高度技能を取得した労働者、外交官などに限定した。

観光業界の関係者らは、ワクチンパスポートが、業界の回復に大いに役立つと信じている。ベトセンス・トラベル社のグエン・バン・タイ社長は、「外国人観光客の受け入れ開始は、航空業界をはじめとした交通各社、宿泊業、飲食業、さらにはそれ以外のビジネスにも利益をもたらすことになる」と期待する。また、ベトフット・トラベルのファム・デュイ・ギア社長も、ワクチンパスポート事業の開始が早ければ早いほど、観光業界の回復も早まる」と話す。

旅行会社のラックス・グループのファム・ハー最高経営責任者(CEO)は、「観光業界で働く人をはじめ、島の住民も全員がワクチン接種を受けることが望ましく、観光客もワクチンパスポートの取得者のみを受け入れ可能とすべきだ」と主張する。大手旅行社、サイゴンツーリスト社のドアン・ティ・タイン・チャーマーケティング広報部長は、「ベトナムは段階を踏んで、ワクチンパスポート事業を実施していくべきで、まずは、コロナ制御が効果的であった国からの観光客受け入れから始めるべきだ」という。

◇ハロン湾で試験運用を開始
文化スポーツ観光省は、ワクチンパスポート事業の正式な実施に向けて準備を進めており、まずはすでに大規模なワクチン接種事業が行われて集団免疫を獲得し、コロナ抑制に成功した国の観光客から受け入れを開始する考えだ。これによって、観光客の動きや人の流れをうまく制御し、旅行客の旅程を効率的かつ安全に管理することができ、受け入れが認められた観光客は、指定された観光地やリゾートなどを訪れることができる。

7月に入り、バンドン国際空港を抱え、外国人に人気の観光名所、ハロン湾があるベトナム北部のクアンニン省が、ワクチンパスポート事業の試験的実施を始めた。

保健省のド・スアン・チュイエン副大臣がプロジェクトの先頭指揮を執った。入国対象となるのは、ワクチン接種が完了しワクチンパスポートを所持している外国人観光客、またはコロナに罹患後、完全に回復した外国人観光客で、ベトナム入国時のPCR検査が陰性であれば、検疫期間を通常の21日から7日間に大幅に短縮、その後7日間の自主隔離の後、観光で移動できるようにした。

ワクチンパスポートの対象となるのは、世界保健機関(WHO)や米国疾病予防管理センター(CDC)、欧州医薬品庁(EMA)などの機関、またはベトナム国家が認めたワクチンの接種者だ。最後の接種日が入国より14日以上前で、12カ月以内でなければならない。新型コロナに罹患した人に関しては、対象者が治療を受けた国が認定した医療機関が発効する「完治証明書」を提出しなければならない。

ベトナム到着前の36時間以内に、入国希望者らは自身の健康状態などを記した問診表を提出し、ベトナム国内での滞在先予定などを申告しなければならない。また帰国時は、ベトナム出国前の72時以内にPCR検査を受け、陰性でければ出国できないとしている。