新型コロナウイルスの影響で大打撃を受けている観光分野で、デジタル・トランスフォーメーション(DX)が加速している。医療機関などの情報を盛り込んだデジタルマップの提供や電子ワクチン証明の実験、サービスや人材運用の効率化など。ポスト・コロナに向けて新たなビジネスモデルを模索しようと、 業界のデジタル化が一気に進みそうだ。

写真㊤=観光地はSNSを使うなど、さまざまなチャンネルでPRを展開している

新型コロナウイルスの感染拡大以来、観光地や旅行会社では、顧客との間を双方向的につなぐメディアの導入など、新たなコミュニケーションのチャンネルを模索するところが増えている。IT専門家は「ITの導入によって旅行会社は、特定の顧客のニーズにより細やかに対応することができるようになり、売上を伸ばすことができるようになる。効率的なデータベースを構築すれば、顧客データの利用はもっと容易になるだろう」と予測する。

困難な時代を迎えた今、観光産業にとってITは生命線となっている。旅行会社、トラベロジー・ベトナム(Travelogy Vietnam)のブ・バン・チュエン最高経営責任者(CEO)は、「ITは、組織やビジネスの効率化を進め、競争力を高めてくれるだけでなく、企業活動の透明性を高め、持続可能な発展を可能にしてくれる」と強調する。


デジタル化進む観光業界 アプリ充実やワクチン証明整備

ベトナム観光協会では、旅行会社に対して、ポスト・コロナに備え、設備の改善や人材のオンライントレーニング、段階的なDXに注力することなどを奨励している。ブ・ザ・ビン副会長は「DXによって、将来の見込み客の獲得や顧客サービス、競争力の向上、コストダウンが可能となるだろう」と期待を寄せる。

ベトナム観光総局(VNAT) のハ・バン・シュー副会長は、「デジタル・アプリはツアーの安全運営や新型コロナウイルスの感染予防策にも役立っている」と話す。VNATでは、文化スポーツ観光省とともに旅行者の安全に向けた技術を開発と普及を進めている。その一つがトラベル・ベトナム・セーフティー・アプリだ。同アプリは、指定機関に登録された飲食や宿泊、娯楽施設、交通機関や病院、薬局を含めたデジタルマップを提供し、旅行先がいかに安全かを容易に確認できるようにしている。利用者は、訪れる地域の感染者や入院者数など新型コロナウイルスの感染状況も確認できる。

また、VNATは、グーグルとともに「グーグル アーツ&カルチャー ワンダーズ・オブ・ベトナム」のタイトルで観光PRプロジェクトを展開。観光イベントや文化遺産、歴史、料理など約1400枚の写真で紹介する35のオンライン展覧会へ招待するなど、新たな手法でベトナムの魅力を紹介している。このほか、ユーチューブでもPRも行っている。

外国人観光客の受け入れ再会に備える動きも進んでいる。観光当局は、キエンザン省のフーコック島などで外国人訪問者を対象としたワクチンパスポート利用の実証実験を準備。国内ではすでにワクチン接種のデジタル証明書が導入された。文化スポーツ観光省では、観光をベトナムの中核産業にし、世界トップ50に入る観光地にするため、今後もDXを最優先して進めていくとしている。