ベトナム「お祭り」考-イベントと「祭り」1

ベトナムの「祭り」が大きく様変わりしている。経済的な理由や社会の変化は、伝統的な祭りの一方に、近代的なイベント、フェスティバルを登場させた。伝統的な祭りにも機能や要素の変化がみられる。“お祭り”の概念そのものが変わりつつある。

祭りの開催期間には長、短の二つの傾向がある。山間部の村落の祭り、伝統的な祭りは比較的期間が短い。しかも、その期間がさらに短縮されるケースもある。モン族の「ガウタゥ祭り」はかつて、3~5日間開催されていた。しかし、今ではその期間は半日から2、3日だ。一方、一カ月から数カ月間続く祭りもある。例えば「フォン寺のお祭り」などだ。

祭りの会場も拡大された。以前は、村の祭りはその村の範囲内で行われてきた。しかし、現在は観光PRなどのため、村の祭りは「空間」も「時間」も拡大される傾向にある。多くの村の祭りは、その地方または省(郡)の祭りになっており、かつて村人だけだった参加対象は、多くの民族や外国人に広げられている。

祭りの主催者についても、山間部、都市部(平野部)ともに変化がある。かつて、村の伝統的な祭りは、その村落の人々が力を合わせて準備し、自らが主催者だった。

現在、村の祭りや地方の祭りの多くは、行政機関などによる「責任者」が存在する。村の祭りで「開幕スピーチ」が行われるようになった。都市部の場合、多くの祭りは、イベントプロモーション会社が運営する。芸術団体がレンタルされ、ゲスト出演する。

こうした祭りでは、地域のコミュニティーや住民の役割がなくなってしまっている。

伝統的な祭りの目的、機能、構造も変更されている。村の祭りは、忙しい作業を終えた農家の人々がリラックスするとともに祈りを捧げるためのものだった。しかし、今は、観光市場(マーケット)の状況によって、祭りは地方をPRすることが主な目的となった。祭りの主催者と観光客の関係は、“サービス業の関係”になった。

この20年間、ベトナムでは、イベントブームが続いている。多くの人々が「新しい祭り」として「イベント」を考え出し、メディアや管理機関がそのイベントを「お祭り」と表現している。一部の「花の祭り」や「果物の祭り」などだ。

言葉づかいについて、メディアはより正確になるべきだ。「~(の)記念プログラム」、「(地方の)設立記念日」などと呼ぶべきであり、何でも「お祭り」という言葉をつかうのは正しくない。「お祭り」を区別することが必要だろう。

イベント(フェスティバル)ブームは観光市場が変化した結果だと言える。イベントを開催することで、地方ブランドを発信し、観光をPRし、さらに観光開発に役立つという長所が考えられる。

実際、地方でイベントを開催することで、多くの観光客を誘致し、地方の物産品を販売することができるだろう。

しかし、弱点もある。

観光業にあまりメリットがない地方が「他の地域も開催しているし、うちもやった方がいいか…」との思いでイベントを企画したとしても、開催するためには、何十億ドン(10000ドン=約46円)もの多額の費用が必要になる。芸術プログラムをはじめ、他の地方のイベントと「同じようなプログラム」であることにこだわらなければ、予算は変わってくるのだが…。(つづく)