思い出に残る上質な旅 ~ ベトナム観光業53年の歩み

ベトナム旅行総局が設立(1960年)から53年を迎えた。ベトナムの観光(旅行)業はこれまで力強い発展を遂げてきた。観光業は外貨の収入源であり、雇用を促進する。他分野の産業の発展や開発にも貢献し、ベトナムの経済・社会の発展にとって重要な役割を果たしている。

観光業は党、国家、政府から、経済の「明るい点」とされ、「国の経済・社会が発展するための重要な要素の一つ」と評価された。党の会議で「経済発展のために観光業を早期に発展させる」との計画が掲げられ、その実現のため「さまざまな需要に応えるために(旅行プランなどの)商品を多様化させる」「国際標準を満たすために品質を高める」などの目標が示された。業界を発展させるため、多くの資源が投じられ、実績の向上とともに規模を拡大、同時に品質の向上が図られた。

旅行総局の設立からは53年を迎えたが、観光業の変化が目覚ましくなったのは1990年ごろからだ。発展のプロセスそのものは決して長いとは言えない。しかし、現在のベトナムの観光業は取り扱うプランの数や品質など、多くの点で国内だけでなく、海外からも高い評価を受けている。その背景には、快適な旅、思い出となる旅行に欠かせない「観光面でのインフラ」と「サービスをはじめとする技術的なインフラ」が向上したことがある。


観光業がもたらす価値

2013年6月現在、ベトナム全土には1184の国際旅行社があり、10,000以上の国内旅行社がある。13,700カ所に上るホテルの総客室数は290,000室。その中には、最高級のランクである「5つ星」ホテルが61カ所(14,393室)、「4つ星」ホテル157カ所(客室数19,770)、「3つ星」ホテル368カ所(25,880室)が存在する。さらに、品質の高さ、国際的な基準を満たした施設、規模の大きさ-などが特長の「ホテル&リゾート」が、重要な観光名所・拠点がある省(県)をはじめ、多くの地方で建設が進んでいる。

2013年上半期(1月から6月)だけでも、ハノイやニャチャン、ダナンで「5つ星」ホテルが開業、もしくは開業準備中だ。これら高級ホテルやホテル&リゾートはベトナム観光の質を高めるとともに海外の観光客誘致につながると、期待されている。

世界規模の経済不況、自然災害や疫病、戦争や地域紛争、テロなどは、旅行に対して悪い影響を与えるが、ベトナムへの観光客数はこの3年間、増えて続けている。

2010年の海外からの観光ツアーは前年比34.75%増の504万9855(単位はツアー=旅行)、2011年は同19.40%増の601万4032(ツアー)、2012年はさらに前年から13.86%増えて684万7678(ツアー)だ。統計の単位は「ツアー」だが、単独での旅行客は少なく、団体客もいることから、ベトナムを訪れた観光客の数はこの数字より大幅に多いだろう。

2013年上半期、ベトナムへの海外旅行は354万403(ツアー)に上り、前年同期に比べて2.6%増えている。

国内旅行も増加が続いており、地方での観光(旅行)業界発展の原動力になっている。

国内観光は2010年が約2800万(ツアー)、2011年約3000万(ツアー)、2012年は約3250万(ツアー)に上った。2013年上半期の国内観光はおよそ2400万(ツアー)に達し、2012年同期から12%増加している。

山や高原、海、島などを対象とした伝統的な旅行に加えて、新たに特徴のあるツアーも提案されている。登山、シュノーケリングやスキューバダイビング、洞窟探検、エコロジーツアー、スポーツや療養をメーンに据えたプランもある。

観光客の増加とともに、ホテルの総収入も増えている。2010年約96兆ドン(約4524億円)、2011年約105兆ドン(約4948億円)、2012年約160兆ドン(約7541億円)。2013年上半期は約105兆ドン(約4948億円)で2011年の年間と同額だ。近い将来、観光業の収入がGDP(国内総生産)の5.5%を占める―との予測も出ている。(1ドン=0.0047円で計算)

観光業は社会にもたらす価値が大きい。旅行の増加は「商品・サービス市場」を拡大する。地方にも多くの観光地が存在することから、地方で暮らす人々の生活を改善する可能性がある。都市部、地方を問わず、離れた地域や海外との経済・文化交流を通じて知識を高めることにも貢献するだろう。雇用創出の効果も大きい。観光業に直接従事する労働者は約50万人、間接的に従事する労働者は約100万人に上るとみられている。

地域・国際協力と人材教育

観光業における周辺地域との連携や国際間での協力拡大を図るため、長年にわたって努力が続けられてきた。その結果、ベトナムは旅行に関して、多く地域や国々と協定を締結することに成功した。ASEAN(東南アジア諸国連合)の10カ国をはじめ、メコンデルタ地域の旅行協力、メコン-ガンジス川協力、ASEAN、APEC(アジア・太平洋経済協力会議)、ASEM(アジア欧州会合)との協力、アジア・太平洋旅行協会、世界旅行組織、シンガポールや日本、タイとの観光協力も締結された。さらに国内に重要な観光地を持つ国々、国際的な観光交流センターがある国との協力も結ばれた。

国や地域との協力に加えて、世界各地の旅行会社と良好な関係を築くことにも成功した。

一方、観光業の技術革新においては、人材教育が重視され、改善が図られてきた。観光について専門的な知識を学べる大学、職業訓練学校、専門学校が建設され、成長を遂げてきた。施設や設備は、新設をはじめ、常に充実が図られ、指導を担当する教授、教員も増加傾向にある。指導に際しては専門知識の修得と外国語の知識向上に注意が払われている。

訓練や再訓練では国際的な基準を満たすことを念頭に各種のカリキュラムが整備されている。

ルクセンブルク、日本、スペイン、オランダ、キューバ、EU(欧州連合)などはベトナムの旅行業に携わる人材の育成・技術の向上に好意的な援助を行っている。


観光地としての価値、高まる評価

ベトナムは観光地として、国際的に有名な旅行会社・雑誌から高い評価を得ている。今年上半期だけでも、数多くの賞を受賞した。

旅行に関する世界有数のウェブサイトTrip Advisor(トリップアドバイザー)では、「ハノイ、ホーチミン、ホイアン、ハロンは『アジアの一流の観光地』である」と紹介された。

旅行に関して詳細な情報を数多く提供しているLonely planet(ロンリープラネット)のトラベルガイドでは「ベトナムの屋台ツアーは、世界で一番魅力のあるツアーの一つだ」と評価された。CNNの旅行専門ページでも、バイザイビーチ(フーコック島)やアンバンビーチ(ホイアン)が、Lonely planetの「世界の美しいビーチ100選」に選ばれことが掲載された。

また、米国ツアーオペレーター協会によると、ベトナムは「2013年海外旅行で行きたい国」の2位に選ばれた。

そのほか、著名な旅行雑誌で「Sofitel Legend Metro pole Hanoi(ソフィテル レジェンド メトロポール ハノイ)」、「Park Hyatt Saigon(パーク ハイアット サイゴン)」、 「Sheraton(シェラトン)」の各ホテルが、「東南アジアの一流ホテルトップ20に入る」として取り上げられ、「Life Heritage Resort Hoian(ライフ ヘリテイジ リゾート ホイ アン)」「The Nam Hai(ナム ハイ)」が「アジアの高級リゾート地ベスト15」の10位と14位にそれぞれ選ばれた。

国際的な評価は、ベトナムの「観光地としての魅力の証明」と言えるだろう。それは長年にわたる取り組みがもたらした一つの成果だ。その魅力をさらに高めること、それがこれからの目標だろう。