観光回復に向けて宣伝活動を刷新へ、「安全な旅行」アピール

ベトナムの観光業界は、コロナ禍からの回復に向けて広告宣伝活動を刷新し、安全で開かれた観光地を打ち出していく方針だ。

◇旅行者と収入、軒並み減
2020年に始まる新型コロナウイルスのパンデミックは、ベトナムの観光業界に多大な影響を与え、海外旅行者数では、2015〜19年に記録した年平均23%の成長がストップした。昨年、ベトナムを訪れた海外旅行者は370万人にとどまり、2019年と比べて80%減少。国内旅行者は5,600万人で、前年比で34%減少した。2020年の観光収入は312兆ドン(約1兆6,000億円)であり、前年比で60%近く落ち込んだ。2021年は、1〜8月期の国内旅行者数が、前年比5.5%減の3,120万人、国内旅行の観光収入は前年比で37%減となった。

写真㊤=ベトナムは「安全な観光地」としての情報発信を強化する

ベトナム観光総局のグエン・チュン・カイン局長は、「前例のない厳しい状況であるが、ベトナム観光の広告宣伝活動は継続している。そこには、ウェブサイト(https://vietnam.travel)上でのメディアキャンペーンやSNSを活用した取り組みが含まれる。また、観光総局では、海外のパートナーとの情報交換や連携を維持するために、国内企業と協力してオンラインプログラムも企画した」と述べる。

海外旅行者がベトナムを訪問できなくなったため、「ベトナム人のベトナム旅行」「安全で魅力あるベトナム旅行」といった様々な企画で、国内旅行の回復を後押ししてきた。企画の実施には、地方自治体や旅行会社、宿泊施設からの支援も受けている。

◇広告チャネルの多様化
ベトナム観光総局は、これまでの観光プロモーションの経験から、市場ニーズに合わせた柔軟な対応が重要であると認識している。海外向けの宣伝活動に加えて、国内向けの観光刺激策では、自国の美しい風景をより深く知ってもらう機会が必要だ。とりわけ、パンデミックという困難に適応するためには、先端技術の採用とデジタル・トランスフォーメーションの導入に注力する必要がある。


観光産業の早期回復が期待される

文化・スポーツ・観光省は、パンデミックからの復興期に向けて旅行需要を喚起し、2021年の後半から22年の前半には観光活動を再開させるための計画を策定したが、これは6つの重要課題に焦点を当てている。

観光業界では引き続き、感染拡大が収まった地域での「ベトナム人のベトナム旅行」「安全で魅力あるベトナム旅行」といった観光刺激策の実施、開かれた観光地・安全な旅のPR、最新の優遇政策情報の提供、国内外におけるコミュニケーションチャネルの多様化、観光振興活動における自治体・企業への支援などを進める。

カイン局長は、地方自治体は、観光業の従業員に対する2回分のワクチンを確保するため、保健省にワクチンの優先配分を提案すべきであり、国内観光の再開と外国人観光客の誘致に向けて、安全な環境づくりに努めるべきだとする。

観光業界では、観光マーケティングの促進に向けて、あらゆるリソースを動員して連携を促していかなければならない。