コロナ禍で変わる観光 地域に根差したCBT増加

新型コロナウイルスによって、観光のトレンドが世界的に変化しようとしている。中でも、アフター・コロナの大きなトレンドになりつつあるのが、地域住民による観光開発「コミュニティー・ベースド・ツーリズム」(CBT)だ。日本の里山観光に見られるようなCBTは、ベトナムでも盛んで、観光地域経済再生の一つのかぎとして注目されている。

写真㊤=CBTは、アフター・コロナにおける旅行者の最初の選択肢となりそうだ

CBTは、途上国だけでなく、先進国においても増加。経済振興や所得増加など、地域の持続可能な発展にも直結すると期待されている。特にベトナムでは、2015年から20年の間に急増。ベトナム観光総局(VNAT)によると20年現在、約300の村でCBTが行われ、山岳や沿岸部の収入増や産業発展につながっている。

VNAT観光開発研究所のグエン・アン・チュアン・ディレクターは、「ベトナムは他国より出遅れたものの、地域性豊かなツアーの提供によってCBTの先進地となっている」と評価する。政府は、これまで発展から取り残されてきた地域が、こうしたビジネスモデルを取り入れることで生活を改善できるようにする支援方針を打ち出した。


企業が中心のイノベーションエコシステムの発展を目指す

新型コロナウイルスの流行によって、旅行者が観光に求めるものは変化しつつある。安全性や感染防止、人混みがなくすいている場所といったことなどが最優先事項として求められるようになってきた。VNAT市場局のブ・ナム副ディレクターは、「新型コロナウイルスによる観光への影響は、まだまだ厳しい状況にあるが、政府はCBTに対する支援策を打ち出す必要がある」としている。

政府は、20年から25年までを計画年とするアクションプログラムにおいて、国境地帯や沿岸の島々などでのCBTを含めたさまざまな施策を提案。地域企業への財政支援や雇用創出、人材育成を支援する方針を打ち出している。