外国人観光客の受け入れ緩和 業界回復へ期待

新型コロナウイルスの流行によって約2年間、海外観光客を含め、海外からの入国停止としてきたが、ベトナムは今月15日、13カ国に対するビザ免除措置を、正式に再開した。新型コロナの世界的感染拡大で大きな打撃を受けた観光業にとっては、回復につながるとの希望が高まっている。

◇最適な再開時期
ベトナムが展開してきた国民向けのワクチン接種キャンペーンは、全員の接種完了が目前となっており、海外からの観光客を含めた入国許可の実現を後押しとなった。

観光業は2019年ごろまでは、国民総生産(GDP)の約9.2%に相当する、などベトナム経済をけん引する経済分野だった。2019年の外国人入国者は1800万人を数えたが、新型コロナの影響でその数字は15万7000人にまで落ち込んでいた。

20カ国向けに飛ぶベトナムの国際路線は、2月半ば以降、順番に再開された。航空業界や観光業、企業の出張などを回復させるため、新型コロナのワクチン接種証明や回復証明書、自主隔離なども必要がない。その代わり、ベトナム入国72時間前のPCR検査、またはベトナム渡航24時間前までの迅速抗原検査を受ける必要がある。出発前検査を受けていない場合は、到着後24時間以内にPCR検査を受ける必要があるという。いずれの場合も、ベトナム入国後は、政府の支持する感染予防策を守る必要がある。

ベトナムでは2022年の外国人観光客数を約500万人になると見込んでいる。今回の入国緩和措置は、航空会社が潜在的な市場への国際便を増やすというねらいもある。

隣国のタイでは、外国人観光客らの入国に対してより厳しい制限や検疫をいまだ維持している。ベトナムが率先して入国を緩和したことは、ベトナムにとっての追い風になると期待される。

ベトナムのワクチン接種が順調に進んでいることも、入国制限の緩和の引き金となった。人口9800万人うち、約77%がすでに所定の予防接種を接種しており、ベトナムは東南アジアでもっとも接種率の高い国のひとつとなっている。

◇ビザ免除要件の緩和で観光業に弾みを
ベトナム国内の新型コロナの感染者数は、ここ数カ月間でゆるやかに減少。昨年11月以降、承認を受けた特定の場所での観光事業再開によって、少しずつ国内の観光客も戻りつつある。

さらにドイツ、フランス、日本、韓国など、新型コロナ流行前に対象とされていた国々からの入国を対象に、3月15日、入国目的を問わず、15日以内の滞在のビザ免除措置が再開された。また、米国、カナダなど80カ国からの入国者を対象に、特別サイトを設け、最大30日までの観光ビザの電子版が取得できるようになった。

このような措置が取られる見込みとなった1月上旬には、ベトナム行きの国際航空路線についてのインターネット検索が、前年同期比で452%も増加した。観光客の需要の高まりのほか、旅行代理店や観光サービスなどを展開する企業などの期待を如実に示す数字だ。

国際航空運送協会(IATA)が、世界的な旅行需要が、新型コロナ流行前の約44%程度にまで回復すると予想していると話す。航空産業も、新型コロナによる低迷からの経済復興と発展加速の機会を歓迎している。だが、それが本格的に実現するには、「今後さらに企業の努力と政府、地方当局などの支援が必要だ」とベトナム航空事業協会のブイ・ドアン・ネー副会長は言う。

ベトナム国家観光局のグエン・チュン・カイン総合マネージャーは、「ベトナムが観光部門の競争力を高めるためには、観光商品と観光用の宿泊施設の品質を向上させる必要がある」と提唱している。