カルストと多様な民族文化 ベトナム最北端の地、ドンバン

ベトナム最北端に位置するハザン省のドンバン県は、石灰岩の浸食によって形成されたカルスト台地の景観で知られる。地域には、建築遺産のブオン住居跡(Vuong residence palace)、ドンバン旧市街地 (Dong Van Old Quarter)、バンチャイ原始林(Chai primeval forest)など文化遺産や自然遺産も多く近年、観光地としての人気が高まっている。

同県は、ハザン省の中でも人気の高い観光地の一つで、県内にはモン族やロロ族など17の少数民族グループの25万人が居住。それぞれが固有の文化や祭事を継承し、多様な文化を形成している。中でも、モン族のカウカイ・ラブ・マーケット祭は有名だ。

また、石灰岩などの水に溶けやすい岩石が、雨水などによって侵食されることによって形成されるカルストの地形は、ドンバン・カルスト台地(Dong Van Karst Plateau)として ユネスコの世界ジオパークに登録されている。

地元当局によると、同県は近年、7つの観光地、16の歴史文化遺産が省レベルの観光地としてランク(うち4件は国レベル)されるなど、観光分野においてめざましい発展を遂げてきた。受け入れ施設の整備も進み現在、20のホテルを含む245の宿泊施設と72の飲食店がある。

新型コロナウイルスの感染の抑制によって、地域の観光は回復途上にあり、観光産業で働く人たちの収入も上向きつつある。海外からの観光客誘致にも取り組んでいる。しかし、地域が有する観光資源を十分に発揮できているとはまだまだ言い難い状況だという。

こうしたなか、同県は2025年に向けた目標を設定した。具体的な数値目標として、省人民委員会が承認する10以上の新たな観光地開発、外国人60万人を含む260万人以上の観光客、2.6兆ドン(約140 億円)以上の観光収入、約1000人の雇用の創出などを挙げている。目標達成に向けて大きな牽引力になるのがドンバン・カルスト台地だ。ドンバン・カルスト台地は2030年までに、国家認定の観光サイトに認定され、450万人以上の集客、5兆ドン(約280億円)の収入、3000人の雇用を創出することが期待されている。こうした追い風を受けながら目標の実現に向けて、同県は、新たな観光開発に力を入れ続けていく意向だ。