赤れんがの空中都市 タップ バンイット
ビンディン省の省都、クィニョンの市街地にある遺跡、タップ ドイから、北西に車で約20分。住宅や商店もまばらになり、緑の濃いのどかな田園地帯緑の田畑が広がるなか、小高い丘の上に建つ赤いれんがの塔が現われた。「銀塔」とも呼ばれるタップ バンイット(Tap Banhit)。ビンディン遺跡群の中で最も有名な存在だ。
チャンパ王国の中心都市にふさわしいスケール大きな建築だ
正式名称はタッピエン マオ。ここは、かつてのチャンパ王国の中心都市跡で、丘の頂上にそびえる塔を取り囲むように、宝物庫や碑文庫などのれんが建造物群が立ち並ぶ。はるか周囲の野山を見下ろすロケーションといい、風格ある建造物群といい、どこかマチュピチュやジブリ作品の「天空の城ラピュタ」に登場する空中都市をほうふつとさせる。一帯では、現在も、発掘と修復作業が進められており、数年後には歴史公園として整備される計画だという。
当時のままの姿が残るアーチの装飾
塔が建造されたとみられるのは11~12世紀ごろ、高さ29.77メートル 。ビンディン遺跡群としては2番目の高さになる。底辺は12メートル四方。れんがには、細かな彫刻が施されている。大半の彫刻は風化しているが、基礎部分には、象や人をかたどったものなど装飾が良好に残っている。往時は、塔全体に細かな彫刻が施されていたらしい。現存する小さな彫刻から、建立時の絢爛たる姿がしのばれる。
焼き上がったれんがに直接彫り込んだとみられる華麗な彫刻
塔周辺には、歴代国王の資料を保存していた碑文庫などの建造物が残る
塔の内部から、もう一方の塔を見上げる
塔を支える人の姿をかたどった彫刻
謎のひとつがれんがの接合部。接着剤も何も使っていないのに、ぴったりと合わさっている。「れんがそのものに、接着する成分が含まれていたという見方もありますが、それには反論も出ています。非常に高い技術が使われているのは間違いありませんが、方法そのものは謎です」(文化財担当者)。
れんがとれんがの間は、ご覧の通りぴったり。紙1枚入らない正確さ
内部から塔の天井を見上げる
フランス統治後も、幾度となく戦火にさらされてきたベトナム。タップ バンイットも例にもれず、戦争の被害や略奪に遭い、資料や記録も散逸してしまった。しかし、謎が多いゆえ、歴史のロマンをかきたててくれるのも事実。タイやインドネシアの仏塔や遺跡とは一味違ったベトナムの遺跡の魅力は尽きない。
塔からは周辺の野山が一望できる。まさに「天空の都市」といった感じ
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VNLオリジナル 2013年9月01日