豊かな自然と人のやさしさ 鳥取の旅~美しき色 地球の歴史を刻む絶景 浦富海岸(岩美郡岩美町)

眼下には透き通った海と美しい岩の絶景が広がっていた。両側は絶壁、中央からやや左寄りに、小舟が通れるほどの洞門が開いた島が見える。名勝「千貫(せんがん)松島」だ。

 

巨大な花崗岩はエッジの効いた非対称の造形。表面には「節理(せつり)」と呼ばれる規則正しい「割れ」や断層が見える。この先の長い年月も、節理に沿って侵食が進み、その形を変えてゆくのだろう。

 

周囲には小島が点在し、岩の上には松の木が茂っている。どうやって根を張り、水分を得ているのだろう。

20メートル以上の透明度を誇る海は、海中の波まで見える。この海の色を表現するには何種類もの青と緑が必要だ、はるか昔から、波は風とともにこの地に届き、この壮大で力強い景観を作った。

 

鳥取県の東部、兵庫県と隣接する岩美町。日本海に面した人口約13000人のこの町に山陰海岸国立公園を代表する景勝地「浦富(うらどめ)海岸」がある。陸上岬(くがみみさき)から駟馳山(しちやま)に至るこのリアス海岸は東西約15km。西に断崖絶壁と大小の島々、東は岬に囲まれた白砂の浜が広がる。JR鳥取駅から山陰本線で25分、大阪・神戸から車で約2時半。羽田空港から鳥取空港まで約70分、さらに空港から約30分で、この絶景に着く。

 

浦富海岸は地質学的に極めて重要な場所でもある。鳥取県から兵庫県、京都府へと続く「山陰海岸ジオパーク」のエリアの一つになっている。近くにある「鳥取砂丘」もこのジオパーク(※)のエリアだ。同ジオパーク内の海岸の岩や地層は、日本列島がアジア大陸の一部だったころから現在へと続く地球の歴史が記憶されている。

千貫松島などは約2500万前にさかのぼる日本海の形成以前、日本列島が大陸の一部だったころに出来た花崗岩だ。当時の地球では火山活動が続き、地下深くで、マグマがゆっくりと冷え、花崗岩などができていた。その後、大陸の縁の部分が割れ、日本海が形作られていく。

 

浦富海岸の島々の多くは、かつては地続きだったろう。日本海より「先輩」である花崗岩は、自然のエネルギーを受け続けながら、日本海の誕生から現在までの地球の記憶を刻み続けた。日本海の荒波も多くの魚や動物、そしてわれわれ人間も、浦富海岸の「後輩」だ。

 

 

澄んだ海に負けない美しい岩の島々を見ることができる町・岩美町。この景色は一生の思い出になるだろう。(NEWS LINER)

※ジオパークとは科学的にみて特に重要で貴重、もしくは美しい地球活動遺産を複数含む自然公園の一つ。貴重な地質遺産を教育、観光、産業などに活用することにより、地域の活性化を目的としている。ヨーロッパや中国、日本など各国のジオパークが加盟する「世界ジオパークネットワーク」(GGN)があり、世界ジオパークは2015年、ユネスコ(UNESCO)の正式事業となった。(「山陰海岸ジオパークまるごと体感MAP」などを参考に作成)

 

浦富海岸をはじめとする岩美町の観光ガイドは、岩美町観光協会HP
http://www.iwamikanko.org/ で詳しく紹介されている。景観、食事、宿の情報など、どれも親切で分かりやすい。シーカヤック(カヌー)ツーリングやシュノーケリング、海水で天然の塩づくりなど同町で体験できる催しも紹介している。また、観光協会お勧めツアープランも掲載。日帰りから体験型の1泊2日まで、どのプランも参考になる。
実際に岩美町に着いたら、旅の起点として岩美町観光協会(鳥取県岩美郡岩美町浦富783-8)を訪れたい。観光案内や宿泊先の予約に加えて、観光に便利なレンタサイクルの貸し出しも受け付けている。明るい館内では特産品も販売。JR岩美駅のすぐ前、開館は9時から18時、月曜休館(祝日の場合は翌日)。