世界の各地から過去最大規模の参加者 「ワールド・トレイルズ・カンファレンス(WTC)鳥取大会」 記念すべき大会に

日本で初めての開催となる「第6回ワールド・トレイルズ・カンファレンス(WTC)鳥取大会」(WTC鳥取大会実行委員会、ワールド・トレイルズ・ネットワーク=WTN 主催)は15日、主会場の倉吉未来中心(鳥取県倉吉市)で、オープニングと世界10トレイルの取組と紹介、分科会などが行われた。

大会のテーマは「歩いて、癒やされる。」"HEALTH and REGENERATION"

オープニングでは、大会長を務める平井伸治知事、ガレオ・セインツWTN委員会会長があいさつ。続いてエベレスト世界最高年齢登頂記録(2013年80歳)を樹立した三浦雄一郎さんが「夢を追い続けて、歩く」と題して記念講演を行った。

 

三浦さんは「『あきらめなければ夢はかなう』。その原点が歩くことの中にある」と述べ、「本日は世界の素晴らしいトレッカーが集った。地球を楽しく歩くことは大切、平和に楽しく、健康に。(歩くことの魅力を)大いに広めていただきたい」と話した。

 続いて、ギリシャ、スペイン、オーストラリア、韓国、南アフリカ、台湾、ネパール、トルコ、パナマ、ブラジルからの参加者が、各地の取組とトレイルを紹介。日本語、英語、韓国語、中国語に同時通訳された。

ギリシャの代表は、「キティラ・ハイキング」について紹介。ビザンチン様式の建物や地元の市場で楽しめるおいしい食材、さらに、歩いて初めて見ることができる花の魅力などについて説明した。また、鳥取県の山陰海岸ジオパークトレイル協議会とキティラ・ハイキング・プロジェクトとの友好協定が結ばれたことが紹介された。

スペインの代表は「カミノ・デ・サンチアゴ」のトレイルを取り上げ、「トレイルの大きな柱は『巡礼』であり、歴史的な遺産、自然、食、さらに人々のもてなしに触れることができる」と述べた。

オーストラリアの代表は、世界最長規模の「ビバルマン・トラック」について述べ、マウンテンバイク用のトラックや、アクセスポイントが豊富で1日のトレイルが可能なこと、その一方で、8週間から11週間かけて歩くこともできる多様な魅力を紹介した。

 

韓国の代表は「済州オルレ」を紹介。海の上に設けられた石の道を歩ける―など、自然と文化、人がマッチした魅力的なコースは「歩きやすく、子供からお年寄りまで様々な方が楽しめる」と述べ、「忘れられた道を見出し、つなげてゆくこと」の意義について語った。

南アフリカ代表は、「生物の多様性」や「自然の物語」などさまざまなトレイルを模索していることを紹介。「歩くことを通して、コミュニティづくりや人々のつながりを意識している」ことや「様々な文化、人種をつなぐ活動を試みている」と説明した。

台湾の代表は、自然の景観と文化・歴史遺産の保護についての取り組みを紹介した。また、手作りの道を作る活動をおこなっていることに触れ、「台湾は台風の到来も多いが、自然の道が損傷しないように気を配っている」と述べた。

ネパール代表は「グレート・ヒマラヤ・トレイルズ」を取り上げ、「すべての日常の生活を忘れることができる」とその魅力を紹介。また、新たな取り組みとして「宿泊施設の質を高めることに力を注いでいる」と述べ、「地元の人々にとっても役に立つ施設にしたい」と語った。

 

トルコの代表は、歴史と建築、文化の道をはじめとする、国内のトレイルを紹介。「歴史的な背景を探るため、乗馬によるトレイルもある」と話した。また、「トレイルは地域の人々の収入にもつながる」とし「将来的には大都市への人口の流出を防ぐこともできるだろう」と述べた。

パナマの代表は、パナマの歴史的な変遷を紹介した後、「パナマ運河の周りは緑にあふれた国立公園、そのトレイルはかつて、海賊たちが闊歩した道です。ユニークな冒険をパナマのジャングルで体験してください」と呼び掛けた。

ブラジル代表は「ブラジルの人口の約70%から80%が市街地に住んでいる」とし、その人たちに参加してもらうために、アウトドアに関する文化を構築していることや屋外での活動は価値があることを伝えている―と同国での活動について話した。

ワールド・トレイルズ・カンファレンス(WTC)は、歩く旅と自然保護の価値を共有し、トレイルの発展に向けて話し合う場として、2010年から済州島(韓国)で開催されているトレイル関係者の国際会議。主催するワールド・トレイルズ・ネットワーク(WTN)は、世界のトレイルの発展を目指してスイスのジュネーブに拠点を置く国際的な非営利団体。

鳥取大会には留学生を含めて33カ国・地域から延べ4500人が参加、うち外国人参加者数は32カ国から延べ547人に上った。このうち、国際会議には、過去5回で最大規模の19カ国・地域から58団体が参加、今回、ブラジルが南アメリカ大陸から初参加したことで、南極大陸を除く世界の全大陸から初めて参加者が集う記念すべき会議になった。

大会と今大会に合わせて行われた「ワールドウォークフェスタin とっとり」では大勢のボランティアが活躍した。鳥取短期大学、鳥取看護大学の学生たち、鳥取県信用保証協会、倉吉信用金庫の職員ら延べ約170人が受付や誘導を担当し、通訳者は延べ50人に上った。

また、ワールドウォークフェスタin とっとりでは地元の人々が参加者をもてなした。

会場周辺では様々な催しも行われた。主会場の倉吉未来中心では、世界のトレイル団体の展示、県内のアウトドア関連の展示、クライミング無料体験コーナーなどがあり、にぎわった。また、付近の「ふれあい広場」では、鳥取中部観光推進機構が主催した「B級グルメバトル」が開催され、牛骨ラーメンやあごカツカレーバーガーなどの屋台が出店した。さらにNPO法人未来が主催し、倉吉駅周辺の飲食店34店が会場となった「トリバルin 倉吉」も催され、鳥取の美しい自然と観光名所、街並みを歩いた参加者たちが交流を深めていた。