ベトナムの文化を知ろう!阪大生がみた“生きた学び”をプレゼンテーション-大阪大学と箕面市が連携講座

大阪大学外国語学部(大阪府箕面市)と箕面市の連携講座「大阪大学学生による公開プレゼンテーション!〈ベトナムの文化を知ろう!阪大生がみた“生きた学び”〉」が23日、みのお市民活動センターで開かれ、市民らが参加した。

この連携講座は箕面市と大阪大学大学院言語文化研究科、同大外国語学部が主催した。今回は外国語学部でベトナム語を専攻する学生と大阪大学大学院言語文化研究科言語社会専攻(ベトナム語部会) 清水政明准教授の研究室で学ぶ大学院生、同大学院の研究室を修了し現在は他大学の大学院で学ぶ大学院生、合わせて7人が、それぞれの研究と経験を通じて得た生き生きとした成果や体験から生まれた疑問、今後の取り組みなどを紹介した。

外国語学部の菱川裕人さん、力山春佳さんは、研究者と技術の交流などを目指し、大阪大学の理系と文系の学生、海外(今回のケースではベトナム)の大学・研究機関の理系と文系の学生、地元の日系企業が参加した「カップリング・インターンシップ」について紹介。橋の建設を手がける参加企業から出された「『ほう-れん-そう』の実践が不十分」という課題に対して「ほう-れん-そう」の教科書を作成したこと、ゲームを用いた練習を提案したことなどを説明した。

また、このインターンシップを通じて、幅広い知識が得られたこと、言語の重要性を感じたこと-などを取り上げ、「外国の方とコミュニケーションをとるうえで英語は重要だが、英語だけでは通じない部分もある。通訳などの体験を通じて、学習者が少ないベトナム語のような言語を学ぶ重要性を改めて感じた」と話した。

大阪大学大学院の道上史絵さんは「ベトナム人への日本語教育」について紹介。日本語学習者が年々、増加していることや日本語学校に在学する学生の多くが、留学ビザで来日している私費外国人留学生であることなどを報告した。また、留学生が書いた日記風の文書を示して、参加した市民らに内容の問題点を質問。留学生のアルバイトの時間的制約(1週間で28時間以内)やアルバイトが可能な活動場所について解説した。(※参照)

さらに日本語学校に対して国からのサポートがない▽日本語学校の経営が留学生からの支払いに依存▽留学生の経済的負担-などの日本国内での課題やベトナムでの不誠実な留学斡旋業者の問題について述べ、「日本への留学についての正しい情報の提供」や日本における受け入れ態勢の充実-などを求めた。

※資格外活動の許可は,証印シール(旅券に貼付)又は資格外活動許可書の交付により受けられます。証印シール又は資格外活動許可書には,「新たに許可された活動内容」が記載されますが,雇用主である企業等の名称,所在地及び業務内容等を個別に指定する場合と,1週に28時間以内であること及び活動場所において風俗営業等が営まれていないことを条件として企業等の名称,所在地及び業務内容等を指定しない場合(以下,この場合を「包括的許可」といいます。)があります。《資格外活動の許可(入管法第19条)から抜粋》

京都大学大学院の近藤美佳さんは「日本に暮らすベトナムルーツの子どもたちへのベトナム語教育 継承語としてのベトナム語学習支援」をテーマに発表。初めて覚えたことばで、今でも一番上手に使える言葉=母語、親から受け継いだことば=継承語、子どもの育つ環境で毎日使うことば=現地語-と解説し、母語・継承語を学ぶ意義について、親子・家族の絆となる▽考える力の基礎となる▽アイデンティティの基礎となる、そして「母語・継承語を学ぶことや使うことは子どもたちにとって権利であり、将来の選択肢を増やすことにつながる」と述べた。

続いて、児童への実際の学習支援を振り返りながら、「聞く・話す」から「読む」「書く」ことへの学習の歩みについて詳しく説明。教材選びの工夫や絵を使った学習が児童とのコミュニケーションを深めたことなどを、具体的に紹介した。

また、児童のベトナム語力の伸びを支えたものとしては、「家庭との連携」を最も重要なものとして挙げた。さらに「学校との連携」が重要だった、と述べ「授業」としての認識の大切さ、自分のベトナム語能力が認められる経験-などの事例を挙げ、ベトナム人の児童にとっては、アイデンティティの確立につながり、学習の動機が向上した。日本人の児童にとっては「いろいろな国があるんだ」という文化の相対主義的視点を得るきっかけになった-と話した。

外国語学部の吉本遥さんは、ベトナム中部・ビンディン省への留学をふり返り、「ベトナムの伝統歌劇 トゥオン」について説明。宮廷で盛んに演じられた歌劇であり、その歴史は古く、独自性にあふれたベトナムの伝統文化である。現在も、トゥオンは地域に根ざし継承、発展している-と述べた。また、トゥオン芸術の象徴でもあり、高い芸術性を持つ「お面」について、「(観客は)お面を見るだけで、その人物が善人か悪人かを知ることができ、職業も分かります。また、その色は人物の性格も表しています」と話した。

外国語学部の福井舞香さんは「ベトナムの女性」をテーマに、ベトナム人女性を「縛る」かつての考えとして、伝統的なベトナムの女性像である「四徳」(器用に仕事をこなす▽上品な言葉づかい▽品格の高さ-など)や女性の従うべき相手「三従」を取り上げた。また、ベトナムの若者100人に対するアンケート調査の結果として「現在でも、ベトナム人は『四徳』の考えを大切にしている」との回答が50%を超えていたことを指摘し、一見男女平等に見えるベトナム社会においても、実のところは社会での男性同様の役割に加え、家庭では依然として家事を担わなければならない二重苦を強いられるという、現代ベトナム女性の状況について述べた。

外国語学部の中嶋弘子さんは「南部ベンチェ省の障がい児教育の実態と課題」について紹介。1990年に設立され、ベンチェ省と北部のバクザン省で、障がい児(者)の教育やリハビリテーションなどを目的に活動するNPO団体「ベトナムの子ども達を支援する会」の活動を取り上げ、ベンチェ支援学校創立25周年記念行事への参加や幼稚園訪問、障がい児童の家庭訪問について説明した。特に家庭訪問では、持参したシャボン玉に6歳の児童が大喜びだったことを話すとともに、9月からの新学期に対して、心配する親たちの様子についても述べた。

この後、それぞれの発表にもとづき4つのグループに分かれてフリートークやワークショップが行われた。