空と雲、光と影 鳥取砂丘、深まる秋

鳥取砂丘を歩いた。前日に雨が降ったからだろうか、茶色が濃くなったように感じる。水を含んだ砂は歩きやすく、より遠くまで行くことができた。

「東風が砂を動かし、毎日のように砂丘の表情が変化します。砂丘の、風が織りなす変化を楽しむには、(秋は)いい季節です」。自然公園財団 鳥取支部所長、音田研二郎さんに砂丘の魅力について伺った。

秋は夕暮れ
秋は夕暮れ
夕日のさして 山の端
いと近うなりたるに
からすの寝どころへ行くとて
三つ四つ 二つ三つなど
飛び急ぐさへあはれなり…
と枕草子にあります。そうなんです、秋は砂丘の夕暮れ=写真=なんです。空の有り様といい、雲の有り様といい、「まいて雁などのつらねたるが いと小さく見ゆるはいとをかし」。

夕暮れは、逆光を楽しんでください。風紋の一つ一つが影をつくります。今まで見えにくかった風紋が浮き上がってきます。スリバチの起伏が、砂の上に巨大な影を落とし、砂丘に表情が生まれます。

砂丘の妖気
砂あらしの翌日、スリバチの斜面に、なにやら妖しげな紋様ができることがあります。陽(日)のあたったつややかさと影がつくるふくよかな曲線が、陽の角度とともになまめかしく蠢(うごめき)ます。この「つややかさ」と「ふくよかさ」「なまめかしさ」が、砂丘の美の三大要素です。

砂丘の宇宙感
 砂丘では、季節感が乏しいと思われがちです。しかし、時間をかけて砂丘になじんでくると空、風、日差し、匂い、空気、つくづく秋なんです。そして、砂丘には特有の宇宙感が漂っています。秋にその気配が強くなります。

秋の砂丘植物
砂丘植物たちは、いたずらに飛砂と闘うことなく、地上部の養分を根に移動させて冬眠の準備に入ります。ハマゴウはミントの香りのする実をつけ、秋の深まりとともに紅葉をはじめます。ハマベノギクは、海岸近くで紫色の花を咲かせ、この花が終わると砂丘にも冬が訪れます。

砂丘の虫
生きものたちの活動は穏やかです。その中でハマスズは、晩秋まで夜の砂丘で鳴き声を響かせています。おそらく、砂の中では次の世代が春を待ちわびていることでしょう。