豊かな自然に恵まれた大山では約180種類の野鳥が確認されている。その中には、イヌワシやハイタカ、オオタカ、ハヤブサなどの猛禽類も含まれる。貴重な種であるオオタカ=写真㊦(天王寺動物園提供)が生息する自然環境を次世代に引き継ごうと鳥取県は大山の「オオタカの森」を守る活動を続けている。

平成13年、県は「オオタカの森」を県有地として取得し、保全活動を続けている。

写真㊤=「オオタカの森」観察道付近の様子

「オオタカの森は」の大山山麓北部の標高300から400メートルにあり、営巣に適したアカマツを中心とした森林地帯。面積は104.5ヘクタールに及ぶ。この場所では約80種類の野鳥の生息が確認され、森の豊かな生態系がみられる。

これまでの調査では、オオタカの飛翔個体だけでなく、オオタカの森内で営巣し、雛を育てる様子も確認されている。鳥取県は、このオオタカを保護するために、条例によりこの森林地帯の一部を立入禁止区域に指定。一方では、老齢木を伐採して 若い森林へ更新を図り、また、松くい虫によって枯れた木を駆除して、オオタカの営巣に適した森林環境を整備している。

猛禽類の生態に詳しい天王寺動物園飼育課業務主任の西田俊広さんにオオタカの生態や猛禽類の特徴などを伺った。

オオタカは猛禽類としては中型で、開いた状態での翼の長さ「翼開長(よくかいちょう)」は100センチから130センチ、メスはオスより一回り大きい。九州以北の本州で繁殖が確認されており、エサはキジやヤマドリ、キジバトなど小型の鳥類と小動物。低山帯を中心に繁殖しており、テリトリーとしている。1000メートル以上になるとクマタカやイヌワシのテリトリーになる。

西田さんは「多くの人が抱く『鷹』のイメージは、おそらくオオタカだと思います。オオタカは圧倒的なパワーに加えて奇襲攻撃を可能にする賢さ、素晴らしい視力を持ち、生きてゆく上で高い能力を備えています」と話す。オオタカを含めた猛禽類全般については「猛禽類は強い、格好いい、さらに“一匹狼”的なイメージもあります。確かに猛禽類は『強さ』を持っていますが、同時に『弱さ』も持つ生き物だと思います」。

猛禽類は人工的に繁殖させるのが難しく、産卵数も2、3個と少ない。オオタカは1980年代に最も生息数が減少し、絶滅の恐れが指摘された。保護活動が奏功し、生息数は回復傾向にある。

最近、街中でオオタカをはじめ、ハヤブサやチョウゲンボウといった猛禽類が「観察」されている。エサとなる鳥が人間の近くで生息するようになったことが原因と考えられるが、西田さんによると「オオタカは本来、ヒトが近づく事を敬遠する鳥」だという。

様々な種類の野鳥が生息する名峰・大山は、オオタカにとってもかけがえのない住み家に違いない。