もうすぐ、楽しい夏休みです。楽しい旅行の計画を立てている方も多いと思います。今回は「乗ること自体が楽しみなる」「乗ること自体が旅の目的となる」新型特急をご紹介します。近畿日本鉄道（本社・大阪市）が今春、導入した観光特急「しまかぜ」は、今も座席の予約が難しい人気車両、次世代の特急列車です。

しまかぜの開発に携わった同社の能川一太さんからしまかぜの魅力としまかぜならではの旅について、お話しを伺いました。
また、ベトナムの読者に向けて、News Linerが作成したベトナム語の記事も掲載します。
さらに、同社のご厚意で撮影した、しまかぜ「運転席」からの貴重な動画も合わせてご紹介します。

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近畿日本鉄道株式会社
鉄道事業本部企画統括部　営業企画部
能川一太さん

「しまかぜ」導入の理由

鉄道のビジネスモデルの原点は高速大量輸送にあります。いかに速く、多くの人を目的地まで運ぶか、という事です。しかし、今の時代はそれだけではダメだと思います。
現に、少子高齢化と生産年齢人口の減少に伴い、通勤・通学という、いわゆる定期旅客が減少する中、その対策の一つとしまして、観光需要の取り込みを促進していきたいと考えています。
また、今年は伊勢神宮で、20年に一度の式年遷宮が執り行われますので伊勢志摩地域へのお客様誘致を狙い、式年遷宮を視野に入れて投入しました。
今年の伊勢神宮への参拝者は大幅に増えています。それらの方々に、「乗ること自体が旅の目的となる　しまかぜ」をご利用頂き、さらに伊勢の先にある志摩エリアへお越し頂き、伊勢志摩近鉄リゾートをご利用頂きたい「しまかぜ」はそのための切り札と考えています。
この新しい特急は、既にある需要への対応ではなく、「乗ってみたい」という需要の創造を目指しました。まず、われわれで「どういう車両で、どういうサービスがあればお客様は乗ってみたいと思われるだろう」。そんな仮設を立て、そしてインターネットなど約14,000人の方々を対象に調査を実施しました。その中で、ゆったりとした座席、家族・グループで気兼ねなく過ごすことができる個室などの他、軽飲食を含めた車内サービスを充実させれば新たに需要を創造できるのではないかと考えました。そして、前例にとらわれず、計画に反映した結果が「しまかぜ」です。

どのような旅を楽しんで頂きたいか

「乗ること自体が楽しみとなる」、「乗ること自体が旅の目的となる」。しまかぜはそういう観光特急です。目的地についてからお楽しみ頂くのではなく、乗った瞬間、駅について、しまかぜを待つ間もわくわくする、そんな旅を楽しんで頂ければと思います。
実際、ホームでは、カメラを構えて待っていらっしゃるお客様も多いです。乗り込む前や降りた後にしまかぜをバックに記念写真を撮られる方も多いです。
車内ではじっと座ってらっしゃる方は、ほとんどいらっしゃらないです。乗り込んで席に着くまでにキョロキョロ、席に着かれても座席のボタンを触ってみたり、テーブルを出してみたり、座席の後ろポケットにあるしまかぜの車内案内や式年遷宮のパンフレットをごご覧になったり。中には早々にカフェに並ばれる方や販売カウンターでグッズをお買い求めになる方もいらっしゃいます。
ソフト面では、専属のアテンダントがお客様のお出迎えを始め、車内でのきめ細やかなサービスを提供致します。ご乗車頂くと、アテンダントが季節に合わせて冷たいまたは温かいおしぼりや記念乗車証をお配りします。この記念乗車証は、伝統的工芸品の指定を受けた伊勢形紙のデザインを取り入れたもので、往路は宇治橋、復路は英虞湾と、デザインを変えています。
また、意外と知られていないのが、1、6号車の入り口にあるロッカーでしょう。
お客様のサービスではなんと言っても、カフェ。自分の席を離れて、2階建て車両の上下にそれぞれ13席、6席があり、いずれも窓側を向いたカウンター席です。車窓を楽しみながら沿線の食材を使った軽食や地ビール、ワイン、ジュース、地元のスイーツなどをお召し上がり頂けます。人気なのは、お食事では松阪牛カレーや海の幸ピラフ。飲み物では地ビール、有機栽培コーヒー、地元のみかんジュース、お弁当ではしまかぜ弁当です。
お土産では、しまかぜラスク、グッズはストラップ、キーホルダーが人気です。
車ではありませんので、皆さんでお酒を飲んで楽しんで頂くこともできます。
また、「ゆっくり過ごしたい」というお客様には、プレミアムシートをお勧めします。全席3列、前後間隔125センチのゆったりとした、電動リクライニング・レッグレスト・マッサージ機能付きの革張りの座席です。疲れを感じず、寛いで頂ける様に工夫致しました。
少し高い位置から風景を楽しみたい方には、大きなガラスの見晴らしの良いハイデッカー車両が最適です。
また、ご家族や気の合ったお仲間とたくさんおしゃべりを楽しみたい、というお客様にサロン、個室をご用意しました。特に個室はテレビもご覧になれますし、近鉄沿線の観光情報も見ることが出来ます。
和室では靴を脱いで、掘りごたつ風の座椅子もあり、お年を召した方も、小さなお子様連れのお客様もゆっくりとお寛ぎ頂けると思います。
洋室の座席はソファになっていてリビングにいるような気分でリラックスして頂けます。