華やかなトーへ(Tò he)ベトナムの伝統的なおもちゃ

 

トーへ(Tò he)は昔からある子供のおもちゃ。染めることが出来るお米の粉から作られます。子供たちからリクエストを聞き、それに応じて形が整えられてゆきます。

竜やニワトリ、サル、ゾウ、トラ、そしてバラの花。さらにはスーパマンやピカチュー、マンガのキャラクターなど、子供たちのリクエストは様々。トーへ職人はそんな願いにすぐ応えてくれます。

職人たちの道具はとてもシンプルです。木で出来た箱、染めることができるお米の粉、櫛(くし)、竹串、古い椅子です。全ての道具は箱に収まり自転車の後ろに乗せられます。トーへ職人はハノイの道、公園、市場などを自転車で回ります。最近では、大きなイベントやお祭りなどに呼ばれ、半日から一日、子供たちのリクエストに応える-というスタイルも多くなりました。職人たちの多くは、ハノイから約30キロ離れたスァンラー村から訪れます。そこは「トーへ作り」で有名な村なのです。

昔、お米の粉を染める時は「自然の色」が一般的でした。果物や野菜、植物の色です。でも最近は鮮やかな色が多くなりました。色の変化は、子供たちのリクエストが変わってきたことの表れ。干支や西遊記の孫悟空など、変わらぬ人気者もいますが、かつてリクエストが多かった自然の花や動物たちより、アニメや漫画のキャラクターが好まれるようになりました。

サルやブタ、ウシよりピカチュー、セーラームーン…。キャラクターに似せなくてはなりません。トーへ職人は暇を見つけて、漫画も読まなければならないのです。

トーへを一個作る時間は5分くらい。値段は大体7000ドン~10000ドンです。大きなイベントを除けば一日に10個ほどしか売れない時もあるといいます。職人たちは、お金だけが目当てでこの仕事を選んだのでは、ないのでしょう。「子供たちがトーへで楽しそうに遊ぶ姿を見るのがうれしくて、この仕事が好きになった」。そんな風に思えます。

今、ベトナムでは中国製のおもちゃが市場にあふれています。そんな中、伝統的なおもちゃであるトーへはいつまでも愛され、子供たちにとって幼年期の大切な記憶の一部になっているのです。

(1ドン=0.0047円、8月3日現在)