ベトナムでは、伝統的に旧暦の正月を祝う習慣があります。ベトナム語で「テト(Tết)」と呼ぶ旧正月に向けて行う、もち米の伝統料理、バインチュン(bánh chưng)作りなどのさまざまな準備はにぎやかで、楽しいものです。(VNLハノイ)

テトは、旧暦の年末12月30日から1月3日までで、今年は1月28日が元日になります。

テトに不可欠な食べ物は、バインチュンです。ゾンの葉で包んだもち米料理です。テトの一週間前ぐらいから、各家庭でバインチュンを作るのが、ベトナムの習慣です。

バインチユンの原料はもち米と豆、豚肉など。塩コショウで味付けします。それをゾンの葉で包み、竹の皮を使った薄いロープひもで結んで形作ります。

ゾンはベトナムの森林に自生している木の葉で、形や色のよいものを選び、きれいに洗ってから、葉の硬い茎の部分を薄く切り取って使います。バインチュンは四角形や細い円筒形などさまざまな形状があり、形や目的によってゾンの葉の切り方が違います。竹の薄いロープは、水につけて準備しておきます。

もち米は、水に2時間ぐらいつけてから、きれいに洗って、少し乾かした後、塩と均一に混ぜます。具材の豆は、蒸して、粉砕。豚肉は1.5~2センチに切って、塩コショウを振ります。

バインチュンの形成には、手で固めて作る方法や、金型で作る方法などがあります。
まず、ゾンの葉を下に敷き、その上から、もち米、粉砕した豆を順番に重ねて入れます。真ん中には、豚肉を入れて、またさらに上に豆ともち米を層にして入れます。最後に再びゾンの葉で覆い、形を整えたら竹の皮で作ったひもでくくって中身を包みます。

四角く形よく作るために、金型もあります。

竹ひもで結めば、準備は完了。これを、大なべに入れて、8時間ぐらい煮ます。

バインチュンを煮るのはこんなに大きな鍋です。屋外の火にかけて、水を入れます。この鍋で煮ている間、火で卵やサツマイモ、トモロコシなどを焼くのも楽しみのひとつです。

小型の四角いバンチュンは、子どもが好きなので、よく作られます。

学校でも、学生たちが作り方を学び、実際にバンチュンを調理します。学校によって、授業で行ったり、旧正月のイベントとして行ったりしますが、この学校では中学校たちが小学生たちを手伝いながらバンチュンを調理しています。

テト準備には、バンチュンのほかにも、たくさんの料理を作らなくてはなりません。また、家や会社、お店などで飾るため、桃などの花やさまざまな縁起のいい盆栽なども準備します。

ベトナムのお正月を象徴するホアダオ(桃の花)を生けます。

蘭の花には正月らしい飾り付けをします。

2017年は、ベトナムでも「鶏年」です。そのため、このように花木を鶏の形に整えて盆栽にしたりします。

新しい年にちなんで、新芽も幸せをよぶとされます。また、春を迎えたことを祝うためにも、暖かくなって発芽した木々や盆栽などを飾ります。
家庭では、このようにニンジンの芽も、きれいに飾ったりしますよ。

この時期に新芽が出る「キンカン(金柑)」の盆栽も、テトに飾る植木の一つです。黄色い実をお金に見立てて、家にお金がたくさん入ってくることを祈る意味もあります。

テトには、どの家庭でも祭壇を設けて、5種類の果物を盛り付けてお供えします。このようにして神様やご祖先様、仏様に拝礼するのは、ベトナムの旧正月の大切な習慣です。

ベトナムではこの時期、各家庭ではバインチュンなどの食べ物を準備したり、家じゅうをきれいに掃除したり、飾ったりします。企業や住宅の組織では忘年会、学校では一年の終わりの式典が開かれたり、2017年の旧正月歓迎式典などが行われます。忙しいのですが、いろんな行事があって、テトの前は楽しい雰囲気に包まれます。

ハノイの小学校では、旧正月を歓迎して「バインチュン祭り」が行われました。ステージでは生徒と先生たちが伝統の踊りなどを披露しました。

また、この時期はようやく春になって、屋外の木や花が美しくなってくるので、記念写真をするのも、ベトナムの旧正月の習慣です。アオザイを着て、桃の花などと写真撮影をしている女性の姿をこの時期よく見かけます。

ベトナムのテトは、このように準備の時から、たくさんの楽しみがあるのです。