新年に文字を授かるベトナム伝統の書道祭、シン・チュー

旧暦の新年(テト)に書道の文字を授かる伝統的な風習の書道祭(シン・チュー=Xin chữ)が、ハノイの文廟(孔子廟、Văn Miếu – Quốc tử giám)で開かれている。今年はハノイの書道クラブのメンバーや地方から来た個人の書道家ら約100人が参加している。(VNLハノイ)

書道祭は、1月21日に開幕。毎日、朝8時半から夜8時まで行われている。書いてくれるのは、書道の能力を厳しく審査されて選出された書道家ばかりだ。

テトのシン・チューは、縁起の良い文字や自分の目標などを中国の漢字を使って書道家に書いてもらう古くからの風習だ。ベトナム語で使うアルファベットのクオック・グーで書くものもある。

自分の好きな文字や言葉を選んだり、願いごとなどを込めて書いてもらったりする。新年には、自分がしっかりがんばるようにとの願いを込めた「心」「忍」「順」や、縁起のいい「福」などの文字が選ばれることが多い。授かった文字は、持ち帰って自宅に飾る。


門文廟のホーバンでは書道展示会も行われた

書道展示会には、さまざまなブースがあり、誰にどんな文字を書いてもらうか選ぶことができる。書道家のほとんどは、ユネスコベトナム書道クラブに参加する人たちだ。

真剣な表情で書道をするおじいさんたちの姿を見ると、心が落ち着き、穏やかな気持ちになる。

私が書をお願いした書道家のグェン・ミン・ツーさん(70)は、「好学(Hiếu Học)」という文字をクオック・グーで書いてくれた=写真㊤。私の息子に贈るための書で、勉強の大切さを理解し、勉強を好きになってくれるようにという願いを込めた言葉だ。

文字を書いている間にツーさんに話を聞くと、ツーさんは3年前から毎年、この書道祭に参加しているのだそうだ。最初は漢字を覚えるのが大変だった。さらにその文字を筆で美しく書くために、一生懸命練習を重ねたという。一つの文字を習得するのに、1千回も書く練習をするのだそうだ。

「その時、いつも『忍』という文字を頭の中に入れておくのです。それが、最後までやりとげるひけつですよ」。ツーさんはそう話してくれた。

書は、紙のサイズや材質によって値段が違うが、だいたい10万~40万ドン程度。書道祭は今月11日まで開かれている。